医学講座

汗のお話し①

 今日の朝日新聞日曜版(be on Sunday)に汗の話しが出ていたのでご紹介します。
 汗・汗・汗…におう3物質
 (平成19年9月23日朝日新聞より引用)
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 今年の夏は暑かった。
 気象庁によると、6~8月に29道府県の101地点で最高気温を更新した。よく汗をかいたはずだ。
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 汗には2種類ある。一つは、体中に広く分布するエクリン汗腺から出る汗で、体温調節の役割を果たす。
 もう一つが、わきの下などに集中するアポクリン汗腺からの汗。こちらの役割は不明な点が多い。比較的においが少ないエクリン汗に対し、アポクリン汗はわきがなど体臭の原因で、昔から人々を悩ませてきた。
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 近年、アポクリン汗による体臭の原因物質がほぼ解明され、制汗剤などへの応用が期待されている。
 花王香料開発研究所の矢吹雅之研究員によると、アポクリン汗に含まれる体臭成分は、カレーのスパイスのにおいに似た「スパイシー臭」、古いぞうきんのような「脂肪酸臭」、生臭く鼻を突く「硫黄臭」の3つから成る。
 どのにおいの原因物質もアポクリン汗腺から出た直後はアミノ酸とくっついた「前駆体」という形で、無臭だ。
 しかし、皮膚上の細菌がアミノ酸から切り離すと、原因物質だけになり、においを発するようになるという。
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 3つの原因物質のうち最初に解明されたのは、脂肪酸臭だ。91年に米国の研究機関、モネル研究所が原因物質を学会で報告した。
 スパイシー臭の原因物質を特定したのは花王で、96年、「におい物質」として特許を出願した。
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 最後の難関は硫黄臭だった。分泌量がスパイシー臭の原因物質の100分の1以下と少なく、揮発性が高い。
 物質を突き止めるため、研究者たちは文字通り汗をかいてきた。
 東京都墨田区の花王すみだ事業所には、室温40度、湿度80%にできる実験室がある。90年代半ばから研究員らが自らここで汗をかき、データーを集め、原因物質を探した。
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 やっと2000年、それを突き止めたのだが、世界最大の香料会社、ジボダン(スイス)が日本でも香料として特許を申請していたことがわかり、特許申請はならなかった。
 微量ならグレープフルーツのような香りがする。花王はその前駆体に研究対象を切り替え、そちらで特許を申請した。
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 ところで、花王は04年、米国で18~63歳の女性25人に人前で簡単なクイズや計算、自己紹介をさせ、ストレスを感じさせる実験をした。
 結果、鼻でかいでにおいが強くなった12人のうちの10人で、わきの下の原因物質の量が増えていた。
 長谷川義博主任研究員は「精神的なストレスがアポクリン汗を出す原因の一つなのは間違いない」と話す。
 ストレス社会を生きる限り、においの根本を断ち切ることは難しいようだ。(朝日新聞より引用。文・諏訪和仁)
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 実際に毎日わきがの手術をして、においに悩む患者様を診察していると、ストレスで出るのはエクリン汗が多いと思います。
 エクリン汗もアポクリン汗も、ボトックス注射で劇的に止まります。
 ストレスを受けると交感神経が興奮して、汗を出す信号を発しますが、ボトックスはこれを汗腺に伝えないので汗が出ません。
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 わきが手術はアポクリン腺を外科的に切除する手術です。手術をしてみると、わきがの患者様でも汗腺の量には個人差があります。
 日本やアジア圏では、欧米よりわきがを忌み嫌う風習があります。高校か大学を卒業するまでに手術を受けるのがよいと思います。

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