医学講座

ボトックス

 平成20年3月6日、朝日新聞朝刊の記事です。
 もっと知りたい
 ボツリヌス菌整形は安全か?
 毒素注射「実績豊富な所で」
 筋肉のけいれんなどを和らげる注射薬
 「ボトックス」
 を使った患者が死亡したり
 呼吸不全になったりした事例があり、
 米食品医薬品局(FDA)が
 薬との因果関係の調査に乗り出した。
 国内でも顔のしわ取りなどに広く使われているが、
 そもそも注射薬の成分であるボツリヌス菌の毒性はどれほどなのか。
 「プチ整形」ブームに影響するのだろうか。(松村北斗)
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 ボツリヌス菌を用いた美容施術は安全なのか。
 中村うさぎさんが施術を受けた
 タカナシクリニック新宿(東京都)の
 高梨真教理事長は、「適切な施術なら問題はない」と太鼓判を押す。
 同クリニックは1998年以降、
 ボトックスを患者の顔や体の部位延べ4万ヵ所以上に注射してきた。
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 しわ取りや顔を小さく見せる場合に3、4ヵ月ごとに注射。
 効果が薄れると繰り返す。
 費用は病院によって差があるが、
 タカナシはしわ取りで1回5万2500円だ。
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 国内では米アラガン社のボトックスと、
 仏イプセン社のディスポートが広く使われている。
(注:仏イプセン社は朝日新聞社の誤りです)
(正しくは、英イプセン社です。made in UKと記載されています)
 中国製も両社製の半額ほどで出回っている。
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 ボトックスが国内で承認されている効能は
 まぶたや片側顔面のけいれん、
 頭や首の筋肉のこわばりで首がねじれたりする症状の三つ。
 国内製造販売元グラクソ・スミスクライン(東京)は
 講習を受けた整形外科医らに使用する医師を限っており、
 美容整形では個人輸入して、
 医師の判断で使っているのが実情だ。
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 けいれんなどの治療も美容のしわ取わも、原理は同じ。
 ボツリヌス菌の毒素が、
 筋肉を動かす神経伝達物質アセチルコリンの放出を妨げる作用を利用する。
 筋肉が繰り返し収縮して
 皮膚が折れ曲がる所にできる表情じわを、
 筋肉をまひさせて消すのだ。
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 米国ではボトックスがみけんのしわ取りでも認可されている。
 国内ではグラクソ社がこの効能の承認を厚生労働省に申請中だ。
 国立感染症研究所によると、
 ボツリヌス菌の毒素は極めて強く、
 人間の致死量は注射で2?グラム(1?は100万分の1)。
 グラクソ社によると、
 ボトックスで1800~3千単位に相当する。
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 高梨理事長は、
 美容整形で顔の一カ所に注射するのは10~15単位だと話し、
 「数力所に注射したくらいでは致死量にほど遠い。
 米国での死亡や重体例は技術的なミスがあった可能性がある」。
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 ボトックスは米国では1990年代から広がっていた。
 国内ではいつから始まったのか。
 1999年に美容雑誌「VoCE」(講談社)が特集したところ問い合わせが殺到した。
 編集にかかわった美容エディター近藤須雅子さんは
 「注射で済む手軽さと数ヵ月で元に戻る安心感が人気を呼んだ。
 ここ数年は定着した感がある」と話す。
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 手術を伴ねない「プチ整形」の人気が高まるにつれて、
 ボトックスをめぐる苦情も増えた。
 「まゆが動かなくなった」
 「数年前に注入した部分に炎症が出た」
 といった相談が各地の消費者相談窓口に寄せられている。
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 日本美容外科学会理事長の一瀬正治・千葉学医学部教授は
 「顔の筋肉や構造に詳しい形成外科専門医や、
 実績が豊富で評判がよい所を選ぶべきだ」と助言する。
 美容整形が盛んな韓国では、
 ポトックスがより「過激」に使われている。
 声の震えやかすれが就職や仕事上、
 不利になると考える女性がのどに注射している。
 3、4ヵ月に一度済州島から飛行機を使って
 ソウルの大学病院に通う大学3年生の女性は
 「とても痛いが、
 もうすぐ就職活動なので面接で声が震えるのではないか不安」。
 注射代は1本20万ウォン(約2万2千円)はかかるそうだ。
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 メ モ
 米国での症例
 米食品医薬品局(FDA)の発表によると、
 ボツリヌス中毒の可能性がある重体患者や死者の多くは小児で、
 脳性まひに伴う手足のけいれんなどの治療にボトックスを使っていた。
 この目的での投与は米国でも適応外。
 FDAに対応を要請した米消費者団体は
 「成人を含む87人が入院し、16人が死亡した」
 としている。
 製造元の米アラガン社はこれまでに美容用ボトックスは
 100万人以上に施療されてきた。
 その中に死亡との因果関係が証明された例一件もない」としている。
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 中村うさぎさんが整形体験
 「劇的に若返る」
 「老いは避けられない」
 どんな思いでボトックス美容を受けるのか。
 実体験をエッセーに繰り返し書いている
 小説家中村うさぎさんに尋ねた。
 ブログにも
 「劇的に若返らせてくれる、魔法みたいな注射と記している。
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 最初のボトックス注射は2002年春。
 みけんのしわを取ってみた。
 新宿のホストクラブに通い詰め、
 2千万円近く散財した直後。
 若い女性がホストにちやほやされるのが侮しかった。
 直後は自分の顔でない感じがしたが、すぐに慣れた。
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 2度目の注射は同年秋。
 女優の奥菜恵さんにどこまで似せられるかに挑戦した。
 「工ラ」を減らして小顔に見せるため、
 □を動かす筋肉にボトックスを注射。
 とがったあご、
 高い鼻にするため別の薬品も注射した。
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 この2回は女性雑誌編集部の提案だったが、
 その後、
 自分の意思で肌のたるみを取るなどの整形手術に踏み切った。
 ボトックスは今も約1年に一度みけんとエラに注射してもらう。
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 「美醜は他人の評価ではなく自意識の問題」
 と中村さん。
 容姿にずっとコンプレックスを抱いてきたのが、
 整形で多少解放されたという。
 一方で50歳を迎え、
 自身を
 「表面をコーティングしたミカン」
 と表現する。
 表はつるつるでも、
 老眼など体内は衰えているという意味だ。
 いくらあらがっても老いや死は避けられない。
 整形で痛感したそんな現実を受け止めるつもりだと話す。
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中村うさぎさん


ボツリヌス菌の毒素製剤
ボトックス(左2本)、ディスポート(右)
 (以上、朝日新聞より引用)

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 高梨先生や一瀬先生のコメントの通り、
 ボトックスは正しく使えば、安全な「魔法の薬」です。
 私は、高須先生が開かれた国際美容外科学会で、
 本物の中村うさぎさんを、間近で見て、お話ししましたが
 実にお若く美しい方でした。
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 「表面をコーティングしたミカン」でも
 しわシワになったミカンよりはずっとキレイで、
 商品価値も増し、高く売れます。
 見た目がよければ、味も美味しく感じるはずです。
 私は、自分自身が今年54歳になるので、
 同じ昭和29年生まれの、午年(ウマドシ)の方がいらっしゃると
 とても‘ひとごと’とは思えなくなります。
 キレイで長生きして、ボケない老後を生きたいと願っています。

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