医学講座

縫い方の練習

 私が医学生だった30年前も、
 現在の医学教育でも、
 採血
 縫合法(ほうごうほう)も、
 教室で勉強するだけで、
 人間
 実験台にしての
 練習はできません。
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 採血でしたら…
 学生同士で練習ができますが…
 さすがに…
 学生同士を
 切って
 縫う
 のはできません。
 人間にメス入れて
 切るのは…
 医師免許証を持った人にしか許されていません。
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 私が札幌医大形成外科の講師をしていた
 10年前に、
 形成外科を選択した6年生の学生さんに、
 縫合法という『縫い方』を教えました。
 人の皮膚を縫うことはできないので、
 皮膚に見立てた
 医療用材料(スポンジ)を、
 ナイロン糸という実際に使う糸で縫合します。
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 ナイロン糸は高く、
 一本、最低数百円はします。
 学生実習でも、
 手術に使う糸しか売っていません。
 一人で何本も使います。
 慣れない学生はすぐに糸を切ってしまったり、
 針を曲げてしまったりします。
 少ない予算で、
 この糸を買うのも大変でした。
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 糸も高価ですが…
 持針器(じしんき)という、
 針と糸をつかむ器械や、
 先の細い摂子(せっし:ピンセットのこと)も、
 高価です。
 これらの器械を揃えるのにも、
 お金がかかりました。
 予算がなかったのです。
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 不思議に思われるかもしれません。
 医師免許証がないと…
 切ったり縫ったりできないのに…
 実際の医学教育では、
 この切って縫う練習は、
 必須科目ではありませんでした。
 自動車の運転免許証を与えるのに、
 学科だけで、
 コースも路上もなしで、
 ペーパーテストだけで免許をもらえるようなものです。
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 美容師さん理容師さんの試験には、
 実技があるようですが、
 医師国家試験にも、
 看護師国家試験にも、
 実技試験はありません。
 医師免許証をいただいても、
 新米医師は何もできません。
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 実際に医師免許証を取得してから、
 はじめて手術を担当させていただきます。
 医学部では実際にメスを持って、
 切ることは教えてもらっていないのです。
 医師免許取得前は、
 仮免許なんてのはありません。
 大学の実習で人間を
 切ったり縫ったりはできないのです。

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