医学講座

医療ミスの経験

 前にも一度書いたことがあります
 私には苦い経験があります。
 私がJA帯広厚生病院の
 形成外科主任部長だった時のことです。
 JA帯広厚生病院は、
 十勝地方で最大規模の病院です。
 夜間の救急患者さんも診ていました。
 形成外科の夜間の担当は…
 2年目の形成外科医でした。
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 私の下に形成外科専門医が一人いて、
 3人体制で形成外科を担当していました。
 夜間は、
 病院の近くに住む若い医師が呼ばれて、
 患者さんの診察や手術をしていました。
 自分で手に負えないと判断すると、
 私の次の先生を呼ぶのが…
 当時の暗黙のルールでした。
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 若い先生は、
 有名国立大学を卒業し、
 医師国家試験も一発で合格した…
 ‘優秀な’先生でした。
 残念なことですが…
 私が‘こうしてはいけない’と
 口うるさく注意していた
 医療ミスをしてしまいました。
 実に単純なミスでした。
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 次の日の外来で…
 そのミスに気付きました。
 外来が終了してから、
 私に報告がありました。
 幸い後遺障害にはなりませんでした。
 私は担当副院長に報告し、
 医事担当次長、
 医事課長と相談しました。
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 ベテランの事務方は、
 事故の対応にも慣れていらっしゃいました。
 事務次長が菓子折りを準備してくれました。
 私は研修医と一緒に…
 患者さんのご自宅まで…
 謝りに行きました。
 幸い後遺障害がなかったこと、
 痛みもなく、
 キズも治ったので、
 患者さんからは訴えられませんでした。
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 それどころか…
 『そんなに謝らないでください』
 『言われなければ…』
 『私はミスに気付きませんでした』
 とまで言ってくださいました。
 この事例は…
 明らかに医療者側に原因がある、
 医療ミスでした。
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 今の医学教育や、
 臨床研修システムでは、
 自分が医療ミスを起こした時に、
 どのように対処して…
 誰に報告して…
 どう謝ったらよいか…
 なんてことは教えません。
 ベテラン医師でも…
 患者さんの家まで、
 謝りに行った先生は少ないと思います。
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 交通事故と同じです。
 医療事故は、
 誰でも起こす可能性があります。
 出身大学とか…
 センター試験の成績には関係ありません。
 大切なのは…
 自分も事故を起こすことがある
 …と自覚することです。
 もし事故を起こしたら、
 誠心誠意、患者さんと対応することです。
 これが30年の経験から言えることです。

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