医学講座

高橋まつりさんの命日

 平成28年12月25日、朝日新聞朝刊のトップ記事です。
 働く人全ての意識変えて
 電通過労自殺、母が命日に手記
 高橋まつりさんの母、幸美さんが公表した手記(全文)は次の通り。

 まつりの命日を迎えました。
 去年の12月25日クリスマス・イルミネーションできらきらしている東京の街を走って、警察署へ向かいました。噓(うそ)であってほしいと思いながら・・・。前日までは大好きな娘が暮らしている、大好きな東京でした。
 あの日から私の時は止まり、未来も希望も失われてしまいました。息をするのも苦しい毎日でした。朝目覚めたら全て夢であってほしいと、いまも思い続けています。
 まつりは、あの日どんなに辛(つら)かったか。人生の最後の数か月がどんなに苦しかったか。
 まつりはずっと頑張ってきました。就職活動のエントリーシートの自己PRの欄に、「逆境に対するストレスに強い」と書いていました。自分が困難な境遇にあっても絶望せずあきらめないで生きてきたからです。10歳の時に中学受験をすることを自分で決めた時から、夢に向かって努力し続けてきました。
 凡才の私には娘を手助けできることは少なく、周囲の沢山(たくさん)の人が娘を応援してくれました。娘は、地域格差・教育格差・所得格差に時にはくじけそうになりながらも努力を続け、大学を卒業し就職しました。
 電通に入ってからも、期待に応えようと手を抜くことなく仕事を続けたのだと思います。その結果、正常な判断ができないほどに追い詰められたのでしょう。あの時私が会社を辞めるようにもっと強く言えば良かった。母親なのにどうして娘を助けられなかったのか。後悔しかありません。
 私の本当の望みは娘が生きていてくれることです。
 まつりの死によって、世の中が大きく動いています。まつりの死が、日本の働き方を変えることに影響を与えているとしたら、まつりの24年間の生涯が日本を揺るがしたとしたら、それは、まつり自身の力かもしれないと思います。でも、まつりは、生きて社会に貢献できることを目指していたのです。そう思うと悲しくて悔しくてなりません。
 人は、自分や家族の幸せのために、働いているのだと思います。仕事のために不幸になったり、命を落とすことはあってはなりません。
 まつりは、毎晩遅くまで皆が働いている職場の異常さを指して、「会社の深夜の仕事が、東京の夜景をつくっている」と話していました。まつりの死は長時間労働が原因であると認定された後になって、会社は、夜10時以降消灯をしているとのことですが、決して見せかけではなく、本当の改革、労働環境の改革を実行してもらいたいと思います。
 形のうえで制度をつくっても、人間の心が変わらなければ改革は実行できません。
 会社の役員や管理職の方々は、まつりの死に対して、心から反省をして、二度と犠牲者が出ないよう、決意していただきたいと思います。
 そして社員全ての人が、伝統を重んじることに囚(とら)われることなく、改善に向かって欲しいと思います。
 日本の働く人全ての人の意識が変わって欲しいと思います。
 以上

20161225

高橋まつりさん(左)と母幸美さん=2013年5月、中国・万里の長城で撮影、
幸美さん提供

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 広告大手、電通の新入社員で1年前に過労自殺した高橋まつりさん(当時24)の母、幸美(ゆきみ)さん(53)が、まつりさんの命日の25日にあわせ、手記を公表した。愛する娘の死をきっかけに長時間労働の是正に向けた社会的関心が高まっていることに触れ、日本人の働き方を変えていくために、働く人一人ひとりの意識を変えてほしいと訴えている。
 まつりさんは東大文学部を卒業後、昨年4月に電通に入社。インターネット広告を担当する部署に配属された。試用期間が終わり、本採用になった昨年10月以降に業務が大幅に増え、労働基準監督署が認定した1カ月(10月9日~11月7日)の時間外労働は約105時間にのぼった。深夜勤務や休日出勤が続き、上司から「髪の毛がボサボサだ」「女子力がない」「君の残業時間は会社にとって無駄」などと言われてもいた。このころ、うつ病を発症したとみられる。睡眠時間が1日2時間程度、1週間で10時間ほどのこともあった。
 昨年のクリスマスの朝、都内の女子寮で身を投げ、自ら命を絶った。長時間の過重労働が原因で過労自殺に至ったとして、今年9月末に労災が認められた。遺族側代理人の川人博弁護士は「長時間労働、深夜労働、上司のパワハラが全て重なった」と指摘する。
 労災認定を受け、電通は10月から、午後10時に本社ビルを一斉消灯し、深夜残業を原則禁止した。長時間労働を助長しかねない企業風土を象徴する心得だとして遺族側が問題視している「鬼十則」について、来年から社員手帳への掲載をとりやめることも決めた。
 11月には、違法な長時間労働がはびこっている疑いが強まったとして、厚生労働省の強制捜査を受けた。法人としての電通と関係者の書類送検に向けた捜査がいまも続く。(千葉卓朗)
20161225-2

東京都心の夜景=朝日新聞社ヘリから、林敏行撮影
(以上、朝日新聞より引用)

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 この記事を読んでいて、
 涙が出てきます。
 心からご冥福をお祈りしています
 お母さんの手記にあるように、
 私の本当の望みは娘が生きていてくれることです
 まつりさんが生きていてくれたらと思います。
 でも、
 もうお会いすることはできません。
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 タイムマシンとか、
 時計を元に戻す装置とか、
 そんな夢の機器があれば、、、
 …と思います。
 ほんとうに残念です。
 東大文学部は、
 日本で最難関の大学です。
 どんなにがんばって勉強したのかと思います。
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 私たち医療従事者も長時間労働です。
 休みもありません
 免許をもらっても、
 仕事ができませんでした。
 私は何度も
 折れそうになったことがあります。
 友人や先輩に助けてもらいました
 まつりさんの死で、
 これからの働く人全ての人の意識改革ができればと思います。
 ご冥福をお祈りしています。

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