昔の記憶

旅立つキキたちへ

 平成30年4月28日、朝日新聞朝刊、ひとときへの投稿です。
 旅立つキキたちへ
 学生生活を終え、娘が4月から社会人になった。東京で数週間の研修を終えた後、任地である見知らぬ地へ赴いていった。
 引っ越しの準備を手伝ううちに、4月1日の「天声人語」を思い出した。ほうきで飛ぶ魔法を使う魔女キキが、新天地で宅急便屋を始める物語「魔女の宅急便」を取り上げていた。新社会人らへの言葉がちりばめられていて、娘にその言葉を贈りたくなった。自身の文字で書き写し、荷物にそっと忍ばせた。
 振り返ると、社会人になったばかりの私も、魔女のキキと同じだった。
 失敗の連続。電話の対応もままならず、コピーすらまともにとれない。緊張と焦りを感じる毎日。週末には度々熱を出した。無能な人間に思えて、情けないやら悔しいやら……。
 しかし時間が経つとともに、新しい環境にも仕事にも慣れ、少しずつ前を見つめる元気が湧いてきた。
 やがて、失敗は笑い話に変わっていくのだから不思議なもの。
 時間の魔法は偉大です。
 そう、だからきっと大丈夫。
 旅立つキキたちへ。
 かつてのキキたちはみんな、あなた方を応援していますよ。
 (東京都大田区 石坂紀代〈きよ〉 主婦 57歳)
 (以上、朝日新聞より引用)

      ■         ■
 このひとときを読ませていただき、
 はて?
 4月1日の天声人語に…?
 何と書いてあったかなぁ~?
 思い出せないなぁ~?
 …と考えました。
 朝日新聞デジタル版は便利です。
 過去の新聞記事が読めます。
      ■         ■
 平成30年4月1日、朝日新聞朝刊、天声人語です。
 小さな魔女のひとり立ち
 季節は春、そして満月の晩というから、ちょうどきのうの夜くらいだろうか。13歳の魔女キキが知らない町へと旅立つ日が近づく。周りの心配をよそに、キキは元気に言う。「贈りもののふたをあけるときみたいにわくわくしてるわ」。
▼児童文学者、角野(かどの)栄子さんの『魔女の宅急便』である。ほうきで飛ぶ魔法を使い、新天地で小さな宅急便屋を始める物語は、各国で読まれている。角野さんは先週、「国際アンデルセン賞」の作家賞に選ばれた。
▼アニメ映画でご存じの方もおられよう。製作に関わった鈴木敏夫さんは作品を読んだ時、読者はむしろ若い女性ではないかと感じた。「田舎から都会に出てきて働く女性たちのことを描いた本」だと思ったと取材で述べている。
▼忙しそうに歩く人を見て、理由もなくおびえる。町の何もかもが知らんぷりした顔で動いているように見え、なじめない。「こんなことじゃいけない。何かあたしにできるものを見つけなくちゃ」。キキの焦りは、痛々しくもまぶしくもある。
▼就職や進学で新天地に赴く。必要なのは、小さな魔法の力かもしれない。怖がらずに話しかけられる魔法。寂しいときにもめげない魔法。ひとりの時間を大切にできる魔法……。新生活の助けになってくれれば。
▼読んでいてキキの両親に目が行くのは我が年齢のせいか。厳しく励ます母親、「うまくいかなかったら帰ってきてもいいんだよ」と言う父親。日本のあちこちにキキとその親たちがいる。4月がまた巡ってきた。
 (以上、朝日新聞より引用)

      ■         ■
 天声人語の筆者も、
 お父さんなのかなぁ~?
 …と想像しました。
 私が北大形成外科に入局した、
 1980年の春も、
 失敗の連続でした。
 何もできない医師免許を持った医師でした。
      ■         ■
 手術室に入っても、 
 やらせてもらえるのは、
 せいぜい消毒だけ。
 それも失敗して、
 先輩から、
 やり直しを命じられる始末です。
 被布おいふと呼ばれる布をかけても、
 やり直しでした。
      ■         ■
 手術ができるようになるなんて、
 夢のまた夢でした
 新人医師も、
 新人看護師も、
 何もできないのが4月です。
 うまくいかなかったら帰ってきてもいいんだよ
 …と言ってくれる人はいませんでした。
 4月から社会人になった若者へのエールです。
 最初は何もできない、
 でも、失敗は繰り返すな!

 がんばっていただきたいです。

“旅立つキキたちへ”へのコメントを見る

TEL 011-231-6666ご相談ご予約このページのトップへ