医学講座

第44回日本熱傷学会(東京)②

 2018年5月17日(木)は、
 日本美容外科学会(JSAS)と、
 日本熱傷学会が重なりました。
 5月17日(木)は日本美容外科学会(JSAS)に参加したので、
 日本熱傷学会は2018年5月18日(金)だけ参加しました。
 一日だけでしたが有意義でした。
      ■         ■
 私が気になったご発表です。
 展示(ポスター)という発表なので、
 時間に関係なく見ることができます。
 配水管洗浄剤によるアルカリ熱傷と凍傷の併発が考えられた一例
 服部麻衣、森本奈緒子、大西一徳
 前橋赤十字病院皮膚科
 76歳男性。屋外の水道管凍結に対して、配水管洗浄剤(pH14、水酸化ナトリウム液)を使用し、雪の上にバスタオルを敷き、膝をつく体勢で作業をしていた。
 途中バスタオルに洗浄剤をこぼしたが、そのまま作業を継続していた。作業終了3時間後に両下腿が褐色から黒色調に変色していることに気がつき近医受診。凍傷疑いで翌日当科を紹介受診した。
 当科受診時、両下腿から足背にかけて広範囲に黒色壊死で覆われる潰瘍あり、下腿は腫脹していたが、疼痛はなかった。洗浄剤に含まれる水酸化ナトリウムによるアルカリ熱傷の診断で入院加療をおこなった。
 全身麻酔下に外科的デブリードマンを行い、人工真皮を植皮。外用療法により肉芽増生後、二期的に分層植皮術を実施し植皮正着は良好であった。 経過中、D-dimer上昇あり下肢血管エコーにてヒラメ筋内に多数の血栓形成がみられた。深部静脈血栓塞栓症の診断でヘパリン持続点滴導入後、ワーファリン内服を開始した。
 本例では、雪上での作業中に水酸化ナトリウムに接触しており、凍傷を俳発していたために感覚低下があり、疼痛が生じなかった可能性がある。そのため水酸化ナトリウムヘの接触時間が長時間となり、深達度が進行したことが予想される。アルカリ熱傷と凍傷における組織障害の機序についても文献的考察を加え報告する。
 (第44回日本熱傷学会抄録集より引用)

      ■         ■
 配水管洗浄剤は、
 パイプ○○○
 …という商品名で販売されています。
 一般家庭でもよく使います。
 この中に入っている、
 水酸化ナトリウムが、
 強アルカリです。
 中学校の理科で習ったNaOHです。
      ■         ■
 パイプ○○○という製品には、
 必ず注意書きがあります。
 皮ふについた時
 すぐに水で充分洗い流す。
 異常が残る場合は皮ふ科医に相談する。

 この程度のことは書いてありますが、
 深いキズになるとまでは書いてません
      ■         ■
 アルカリ損傷は怖いです。
 私には痛恨の誤診経験があります
 北海道で起こった事故で、
 複数の救命救急センターが治療しました。
 ドクターヘリで搬送して、
 東京のスキンバンクからも、
 皮膚をいただきました。
 残念なことに…
 どの施設でも救命できませんでした。

      ■         ■
 第20回日本熱傷学会北海道地方会③
 植皮術を必要としたアルカリ損傷の2例
 ○三浦隆洋

 狭い範囲のアルカリ損傷も怖いです。
 三浦先生のご発表のように、
 深くなって植皮術を要することがあります。
 アルカリは身近にあります。
 配管洗浄用の洗浄剤、
 表示をよく読んでください。
      ■         ■
 強アルカリは怖いです
 受傷直後に、
 できるだけ長時間流水で洗浄することが、
 アルカリ損傷を深くしないコツです。
 どんな薬剤を
 どの程度の濃度で
 どの位の時間接触したか?
 できるだけ正確に伝えてください。
 アルカリ損傷は深くなります。
 注意してください。 

“第44回日本熱傷学会(東京)②”へのコメントを見る

TEL 011-231-6666ご相談ご予約このページのトップへ