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札幌美容形成外科院長の日記

ありがとう村上教授

2006年12月16日

 今日、一通の手紙と冊子が届きました。私が札幌医科大学形成外科に在職中にお世話になった、解剖学第二講座の村上弦(むらかみげん)教授からです。村上教授は私より2歳年下で50歳、国内でも英文論文の数が多い現役の解剖学教授の一人です。お手紙によるとご自身の体調のため、教授職の激務を続けることが難しくなったため12月で退職なさるという内容でした。
 解剖学というのはどなたでもご存知のように人体を解剖して体の構造や機能を学ぶ学問です。医学部に入って最初に体験するもっとも医学生らしい学問が解剖学です。正直なところ、『血を見るのが怖く』『おばけやお墓や火葬場が怖かった』医学生の私は解剖学実習が不安でした。しかし、実際に解剖実習がはじまってみると、その不安は覚えるべき知識量と肉体労働に近い実習で打ち消されました。とにかく頭のてっぺんからつま先まで、すべての構造を日本語とラテン語の学名で覚えるのは大変でした。試験も口頭試問のため試験前には必死で覚えたものです。
 そんなに一生懸命勉強したのに、医師国家試験を終わって臨床医になった頃にはかなり忘れてしまいます。実際に手術をしていると、ここの構造はどうだったのだろう?という疑問が出てきます。古くから研究された解剖学でも細かな局所解剖所見になると、現在でも明らかになっていない点がかなりあります。外国では解剖用ご遺体で研究することが一般的ですが、日本で臨床医に門戸を開いている解剖学講座はまれでした。村上教授はご自身に臨床経験があったためか、手術に役立つ臨床解剖に実に精通していました。
 私は札幌医大に勤務してまもなく村上教授と知り合い、自分が知りたかった皮弁の血管解剖の研究をはじめました。勉強熱心な女子学生さんに手伝っていただき、解剖実習室で研究したのをなつかしく想い出します。札幌医大の学生にはゲンと呼ばれ、厳しい解剖学実習に音をあげていた学生も多かったと思います。私は村上教授ほど解剖が好きで、解剖の知識に満ち溢れた教員を見たことがありませんでした。ちょっと変わったところがある名物教授だったため、いろいろ陰で言う人もいたようです。自分が医学生だったら村上教授から解剖学を教わりたかったと思う教授でした。村上教授ありがとうございました。私があなたと共同研究した英文論文は今後も後世に残り、必ず世界中の形成外科医に引用されると思います。


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