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札幌美容形成外科院長の日記

腕を磨く

2007年2月3日

 医師はある意味‘職人’なので、有名シェフや棟梁の下で働き技術を身につけ腕を磨く必要があります。都市部の大病院や有名病院に勤務して、研修を積めば腕も上がり名声も得られるという‘幻想’を持つ先生もいます。
 ところがいくら有名シェフの料理を見ても、腕のよい棟梁の仕事を見ても、医師は先輩に指導していただき、自分で苦労して手術を覚えないと上達しません。自転車にはじめて乗る時は、補助車をつけて、親に後輪を支えてもらって、何度も転んで痛い思いをして、はじめて自転車に一人で乗れるようになります。
 『私は○○大学病院形成外科で研修しました』と言っても大学病院で手術を執刀するのは、せいぜい助手までで、研修医にまで手術をさせてくれる大学病院はマレです。
 私の例でいうと、大学で研修して専門医を取得した後で、釧路労災病院や帯広厚生病院といった地方病院のチーフになって、そこでたくさんの患者様を手術させていただいて手術の腕が上達しました。釧路労災病院は時間外手当も休日出勤手当もありませんでしたが、設備は大学病院以上で、全国の労災病院でも一番というくらい設備やスタッフが充実した病院でした。
 札幌から離れていたため、大学のスタッフに応援を頼むのも大変でした。ですから外傷で目や顔がぐちゃぐちゃになった患者様がいらしても、夜を徹して自分で手術をしなければなりませんでした。徹夜で手術をしても翌日は普通に外来や手術をしていました。私の30歳台の前半はこうして修行を積んで少しずつ腕を磨いたのです。
 今思うと、体も壊さずによく働いたものだと思います。外傷でぐちゃぐちゃになった患者様を治す技術を身につけていると、他院で失敗した美容外科の患者様の修正手術なども簡単にできるようになります。卒業してから美容外科しかしたことがない先生は、二重やワキガや包茎の手術はできても、絶対にアッカンベーになった失敗例は治せません。私が他院で失敗した症例の手術をあまりしないのは、患者様が簡単な手術で治ると思っているからです。 「人の手術の失敗例に手を付けるな」という教えは札幌中央形成外科の武藤靖夫先生もブログに書いていらっしゃいます。
 私はロシアから来たヤケドの子供の治療もしました。下まぶたどころか顔全体がアッカンベーになった子供を治すのは本当に大変でした。国際問題になるので手術の失敗は許されませんでした。あのコンスタンチンちゃんを治したのは私の先輩である、旭川赤十字病院形成外科部長の阿部清秀先生です。阿部先生のところにはいまでもコースチャから連絡があるそうです。苦労して腕を磨いた形成外科出身の先生は、高給優遇の宣伝で美容外科を選び、速成栽培で手術を覚えた先生とは奥の深さが違います。


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