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札幌美容形成外科院長の日記

倒れた理由

2007年3月22日

 昨日、はじめて見た子供の司法解剖で倒れたことを書きました。おそらく私が19歳だった頃です。一浪して入学したので、一年生の秋までは19歳でした。
 解剖されていた子供は女の子でした。生まれつきの病気がありました。死ぬことはありませんが、染色体異常の病気なので治ることはありません。心臓疾患を合併することが多いので、普通の人に比べると短命だといわれています。
 その子を殺してしまったのはお母さんでした。障害をもって生まれた子でしたが、一生懸命育てていたと思います。年齢は小学校入学前位でした。お母さんが将来を悲観してその子の首を絞めて殺してしまいました。お母さんも自殺を図りましたが、一命をとりとめ助かりました。
 首を絞めて死ぬことを縊死(いし)と言います。頸部を圧迫されることにより、窒息状態となります。血液が脳に供給されなくなり、中枢機能が停止し亡くなります。ここまでは誰でも知っていることです。頚部を圧迫されると、圧迫されたところから上は鬱血(うっけつ)という状態になります。指を反対の手の指や輪ゴムで圧迫するとわかりますが、鬱血(うっけつ)すると紫色に変色します。
 その子供の首には、紐(ひも)のようなあとが残り、首から顔面は紫色に変色していました。この子は染色体異常さえなければ、お母さんが殺すこともなかっただろうに…と考え始めました。そんなことを考えながら解剖を見学していたので冷静さを失いました。脳を取り出すために、頭部の皮膚を後ろからはがし、頭蓋骨を出して電動ノコで切りはじめました。キーンという音と骨を削って出る臭いで、自分の血の気がなくなっていきました。
 殺された子供はかわいそうですが、殺してしまったお母さんのその後や、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃんはどんな気持ちだったのか想像もできません。形成外科では生まれつき、顔や手などの体表面に異常がある赤ちゃんの手術をします。私は形成外科医になってからも、いつもこの子供のことを想い出して、少しでも本人や親・兄弟・親戚が気にならなくなるように…と願って手術をしていました。


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