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札幌美容形成外科院長の日記

自殺と救急医療

2007年5月29日

 松岡利勝・農林水産大臣(62)が首をつって自殺した記事が新聞に掲載されていました。搬送されたのは慶応義塾大学病院です。相川直樹病院長が疲れた表情で安倍首相と写真に写っていました。相川教授はもともと外科の先生です。熱傷を研究されていました。外科→救急と活躍され、病院長に就任されました。医師国家試験の出題委員長もなさった立派な先生です。熱傷学会では毎年お会いしています。救命できなかった残念そうな表情が印象的でした。
 救命救急センターに搬送されて来る患者様の中には自殺もよくあります。首をつった、飛び降りた、薬物を飲んだ、灯油をかぶって焼身自殺をした、などたくさんの患者様が搬送されてきます。
 形成外科に関係するのが、焼身自殺による全身熱傷です。救命技術の進歩により自殺をしても助かることが多くなってきています。自殺した患者様でも、救急車で搬送されてくると救急医は懸命に夜も寝ないで治療に当たります。
 全身熱傷を受傷すると簡単に死ねそうに思うかもしれません。ところが先にあげた自殺法の中で、一番最後まで意識があって苦しむのが焼身自殺です。
 人間や動物が死ぬ時は心臓や呼吸が止まり、脳や臓器に酸素が行かなくなって死にます。熱傷を受傷しても簡単に心臓は止まらず、意識もあります。自分の体が黒焦げになって、手も指も炭のようになっているのも見えます。
 何度もなんども手術を繰り返しても、‘絶対’に元のキレイな皮膚には戻れません。指もなくなってしまいます。さらに、自殺は自己の重大な過失による外傷なので原則的に健康保険は使えません。救命救急センターに入院すると、入院費が最高で一ヵ月に1,000万円にもなることがあります。全身熱傷も治療費が極めて高額になります。私が治療を担当させていただいた患者様で数ヵ月の治療費が2,000万円にもなって、両親が家を売って支払った症例もありました。残念なことに結局その方は亡くなりました。
 救急医にとって懸命に治療したけれど命を救えなくて、治療費の借金だけが残った症例はとても悲しくつらいものです。


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