医学講座

開業への思い④

 30代で一度開業をあきらめた私が、
 再び開業を考えたのは…
 JA帯広厚生病院に勤務して…
 一年半が過ぎた頃だったでしょうか…?
 医療ミスの経験という…
 2010年2月23日の院長日記に書いてあります。
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 私には苦い経験があります。
 私がJA帯広厚生病院の
 形成外科主任部長だった時のことです。
 JA帯広厚生病院は、
 十勝地方で最大規模の病院です。
 夜間の救急患者さんも診ていました。
 形成外科の夜間の担当は…
 2年目の形成外科医でした。
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 私の下に形成外科専門医が一人いて、
 3人体制で形成外科を担当していました。
 夜間は、
 病院の近くに住む若い医師が呼ばれて、
 患者さんの診察や手術をしていました。
 自分で手に負えないと判断すると、
 私の次の先生を呼ぶのが…
 当時の暗黙のルールでした。
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 若い先生は、
 有名国立大学を卒業し、
 医師国家試験も一発で合格した…
 ‘優秀な’先生でした。
 残念なことですが…

 私が‘こうしてはいけない’と
 口うるさく注意していた
 医療ミスをしてしまいました。
 実に単純なミスでした。
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 次の日の外来で…
 そのミスに気付きました。
 外来が終了してから、
 私に報告がありました。
 幸い後遺障害にはなりませんでした。
 私は担当副院長に報告し、
 医事担当次長、
 医事課長と相談しました。
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 ベテランの事務方は、
 事故の対応にも慣れていらっしゃいました。
 事務次長が菓子折りを準備してくれました。
 私は研修医と一緒に…
 患者さんのご自宅まで…
 謝りに行きました。
 幸い後遺障害がなかったこと、
 痛みもなく、
 キズも治ったので、
 患者さんからは訴えられませんでした。
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 それどころか…

 『そんなに謝らないでください』
 『言われなければ…』
 『私はミスに気付きませんでした』
 とまで言ってくださいました。
 この事例は…
 明らかに医療者側に原因がある、
 医療ミスでした。
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 今の医学教育や、
 臨床研修システムでは、
 自分が医療ミスを起こした時に、
 どのように対処して…
 誰に報告して…
 どう謝ったらよいか…
 なんてことは教えません。
 ベテラン医師でも…
 患者さんの家まで、
 謝りに行った先生は少ないと思います。

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 こんな事件や…
 子どもが中学生になり…
 高校進学を考える時期になったこともあり、
 私はまた開業を考えるようになりました。
 形成外科で開業した先輩や後輩に聞きました。
 形成外科だけで…
 食べて行くのは大変ですよ…
 みんな口々に言いました。
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 確かに…
 私が市立札幌病院皮膚科で…
 形成外来(けいせいがいらい)を担当した時も…
 皮膚科からや…
 救急部からの患者さんがいらっしゃらなければ…
 閑古鳥が鳴く日もありました。
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 先輩や形成外科仲間のアドバイスは…
 開業するなら…
 美容外科をやらなければ…
 …という貴重な助言でした。
 JA帯広厚生病院形成外科主任部長でも…
 美容外科の経験はありません。
 どうやって覚えようか…
 悩んだ時期でした。

“開業への思い④”へのコメント

  1. さくらんぼ より:

    私も 山形大学病院で手術しなければ 大学の裏側や 内部の事まで知る事はなく 本間先生ともお知り会いになることもなかったです。 大学病院の権力とかほんとに嫌になりました。 患者さんより出世や地位を第一に考えている権力者がいて 言うことを聞かない者は追い出される。嫌な世界ですね。 私の主治医武井寛先生も脊椎センターに移られてからバリバリ手術しておられます。先月は私の知人 来月は叔父が手術していただきます。

  2. なっちゅん より:

    ミスが許されない仕事が
    医療関係者(医師・看護師・薬剤師)ですよね。

    私は結婚前、机上事務のOLで
    自分のミスは何故か自分で1番に気づき
    こっそり直していました(笑)

    医療ミス…菓子折りを用意し謝罪。
    初めて知りました。

    ドラマなどでは隠すのが専らのようでしたので、
    申し訳ないのですが、それを鵜呑みしていました。

    美容外科での医療ミスはどうなんでしょうね。
    個人病院なので、ミスを認めず
    更なる手術を勧められるような記事を
    TVで見ましたが・・・

    母が札幌のY病院で脳梗塞と診断され
    入院しましたが快方へ向かわず
    むしろ悪くなる一方でした。

    私が脳外で有名なS記念病院へ思い切って転院させると
    ジストニアという病名で
    脳梗塞は誤診な為、
    S記念病院からもY病院へお手紙を送るので
    誤診だと行くようと言われました。

    調停でも裁判でも
    S記念病院がついてくれているので
    勝訴出来たでしょうが、
    もう母が治ることだけに専念し
    訴えるのは止めました。
    精神的に耐えられないと思いましたし…。

    只今後もうY病院での誤診がないよう祈ります。

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