医学講座

まぶたの再建2019

 大阪で開催された、
 第30回日本眼瞼義眼床手術学会
 実に内容が充実していて、
 いい学会でした。
 学会長の、
 大阪回生病院眼科の今川幸宏先生に感謝いたします。
 形成外科学が進歩した2019年でも、
 まぶたの再建は難しいです。
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 形成外科医は、
 生まれつきの病気の子どもたちを手術しています。
 唇顎口蓋裂など口唇や顎の骨の病気、
 手の異常、
 耳の異常、
 この30年の間に進歩しました。
 難しいのがまぶたの再建です。
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 特に難しいのが、
 自然に動くまぶたを再建することです。
 昨日の院長日記に書いた、
 先天性無眼球症は、
 生まれつき眼球がない病気です。
 まぶたはあります。
 まつ毛も生えています。
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 ところが、
 眼球がないために、
 そのまま成長を続けると、
 眼窩がんかという骨が成長しません。
 まぶたも小さいままです。
 アツザワプロテーゼ九州の、
 光安哲人さんが製作してくださったような、
 拡張器を目があるべき場所に入れないと、
 骨が成長しません。
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 われわれ形成外科医は、
 手術で治すのは得意ですが、
 拡張器のようなプロテーゼは作れません。
 作る道具も材料も持っていません。
 私が市立札幌病院に勤務していた頃に、
 目の悪性腫瘍で、
 眼球を摘出した子供さんがいらっしゃいました。
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 患者さんとご家族のご希望は、
 たとえ見えなくてもいいので、
 (他人から見て)
 違和感のない目にしてほしい
 …というご希望でした。
 残念なことに、
 文献を調べても、
 学会で発表を聞いても、
 いい解決法がありませんでした。
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 義眼を入れるスペースを上手に作るのは難しいです。
 関西医大形成外科の小川豊名誉教授が、
 義眼床手術研究会を設立されたのは、
 ちょうど私が市立札幌病院で患者さんを診た頃でした。
 生まれつき眼球がない赤ちゃんも、
 眼球を摘出した子どもさんも、
 義眼がうまく入って、
 (他人から)自然に見えるまぶたをつくりたいです。
 日本眼瞼義眼床手術学会が発展することを祈っています。

“まぶたの再建2019”へのコメント

  1. なっちゅん より:

    過去には残念ながら
    力になれなかったことも
    あったのですか。

    今後は拡張器を入れることで
    医学の進歩がありますね。
    益々飛躍して欲しいです。

    【札幌美容形成外科@本間賢一です】
    コメントをいただきありがとうございます。当時はいい考えがなく『きっと将来は医学が進歩して目ができるようになります』という説明をしました。私が30年近くずっと気になっていることです。だからこの眼瞼義眼床手術学会に出るのだと思います。

  2. えりー より:

    自然に見えることで
    自信にも繋がると思います。

    本間先生のように学びと
    患者さんを大切に思う、
    お医者さまが医学の発展に
    力を注いでくださることを
    お願いしたいです。

    【札幌美容形成外科@本間賢一です】
    コメントをいただきありがとうございます。まぶたの再建は今でも最難関の再建だと(私は)思っています。きれいにわからないように義眼を入れるスペースをつくるのはとても難しいです。これからも研究が進むことを願っています。

  3. さくらんぼ より:

    生まれつき眼球がない場合は、なるべく早く義眼を入れるのですね。もっともっと医学が進歩して欲しいです。

    【札幌美容形成外科@本間賢一です】
    コメントをいただきありがとうございます。言葉足らずで申し訳ございません。なるべく早く義眼を入れるのではなく、義眼を入れるスペースをつくるための拡張器(ブジー)を入れるのです。シリコンでできた丸い球状のものに取り出すための突起がついていました。義眼とはほど遠いものです。見栄えも悪いです。眼窩がんかという目の周囲の骨の発育に合わせて入れ替えます。大変な作業です。

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