未分類

醜形恐怖症③

 2日間にわたり、克誠堂出版、美容外科最新の進歩から 畷 稀吉(ナワテ キヨシ)先生の醜形恐怖症の症例をご紹介しました。
 畷先生は、形成外科領域では一番熱心に醜形恐怖症に取り組まれた先生です。残念なことに、平成13年にお亡くなりになりました。
 私たちが外来で醜形恐怖症を疑う方を診察し、精神科を紹介しようとしても受け入れられないことが多くあります。
 畷先生は美容外科最新の進歩に次のように書かれています。
      ■         ■
 筆者は精神科医ではないので正確に診断はできないが、患者から聞き出すことは可能である。そして筆者なりに神経症なのか精神病なのかを判定する。
 この判定にあたっては、過去において患者対応に苦労した経験や、友人としての精神科医との付き合いの中から得たもの、さらに自分で精神科関係の書物を読んで学んだ雑学的知識と筆者の人生経験とが、すべて含まれるものと思っている。
      ■         ■
 さて患者の話を聞いてこの患者は、筆者には扱えない、いや扱うべきでないと思ったら、ただちに精神科医に紹介する努力に入る。
 ではつぎに、いかにして確実に精神科医に手渡しするかの手順について述べる。「あなたがたいへん悩み苦しんでおられることはよく分かりました。
 しかし私にはあなたの悩みは解決できません。なぜなら、あなたの悩みは心の悩みだと思うからです。心の糸のもつれが原因だと思います。
 それらのもつれた糸の1つ1つをはずして楽にして頂けるのは、私が信頼しているお医者さんです。その方を紹介します」というと、患者は必ず「先生、そのお医者さんは精神科医でしょう」と、かえってくる。「はい、そうです」と、さらりと答える。
      ■         ■
 そしてその後で「あなたは、アメリカなどでは、ごく自然に精神科医を主治医として持ち、いつでもアポイントを取って、心の悩みを聞いてもらっていることを知っていますか。
 日本では、まだ遅れていて、精神科医とコンタクトを取ることを恥としているが、それは間違いですよ。私も精神科医を主治医として持ち、どうにもならない心の悩みを聞いてもらっていますよ。
      ■         ■
 このような手順で1989年から1996年12月までに42名の患者を紹介できた。文献でも精神科に紹介することはたいへん困難であると述べられているが、たったこれだけの話で患者は訪ねてくれる。
 福田らは、変形恐怖症の患者対応について、詳細に記述した最後に、精神科に紹介する時に患者に使う言葉として「放置しておけばノイローゼになるから、その予防のために精神科にみてもらうように」との一言が、精神科紹介をしやすくしたと述べている。
      ■         ■
 筆者は「ノイローゼになるよ」にさらに追加して、「このままほっておいたら、本当の精神病になってしまうよ。そんな患者さんを私は何人も見ている。
 あなたにはそうなってほしくないので、私のいうことを聞いて、だまされたと思ってもいいから先生のところへ行って、話を聞いてもらって下さい」と、ムンテラしている。
 本当にこんないい方で、患者は納得して訪ねるのであろうかと思われるだろうが、コロンブスの卵ではないが、一度試してみて頂きたい。
      ■         ■
 患者が筆者の信頼する精神科医を訪ねることを納得したら、確実に紹介できるように努力する。
 なぜなら、患者の悩みを筆者では救ってあげることができないからだ。だからといって見離せば、間違いなく手術をしてくれる医師を求めてドクターショッピングに走るであろう。
 そんな無駄をさせないで、精神科医の治療にゆだねることが大切だと考えるからだ。これが25年間でつかみ得た筆者の結論である。(畷 稀吉)
 (以上、畷先生の著書、美容外科最新の進歩から引用)
      ■         ■
 とても残念なことですが、畷先生はもうこの世にいらっしゃいません。
 私など、足元にも及ばない大先生です。先生が遺された、文献や書物は、先生が亡くなった後も残り、必ず引用されると思います。
 美容外科を志す医師は、最新の治療機器や儲かりそうな治療法だけではなく、必ず醜形恐怖症について知ってほしいと思います。
      ■         ■
 私は、開業後に札幌北警察署から電話をいただき愕然としました。
 その方の手術を私が引き受けていれば、自殺しなくても済んだのではないか?
 精神科と眼科に紹介状を書いて、お母様にも説明をして、私としてはできる限りのことをしたつもりでした。
 手術を繰り返し受けていた方が、死ぬよりもよかったのか?と考えたこともあります。
 メンタルな問題はとても難しく、美容外科医が片手間に対応できるものではありません。
 私は優秀な精神神経科医を友人に持ち、いつでも患者様のことを相談できるようにしています。

TEL 011-231-6666ご相談ご予約このページのトップへ