医療問題

自殺予防ケア

 週刊文春に病院情報ファイルという記事があります。恵原真知子さんという方が担当です。医学的な内容が充実していて、医師が読んでも参考になります。
 9月13日号に横浜市立大学附属病院神経科、河西千秋先生の自殺予防ケアが掲載されていたので、ご紹介します。
 以下は週刊文春の記事です。
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 日本人の自殺者数は1998年に年間3万人を超え、以来9年間もその最悪の状態が続いている。
 昨年「自殺対策基本法」が施行。自殺予防総合対策センターも設置され、自殺対策が整備されつつある。
 自殺は個人的な問題としてのみとらえられるべきものではなく、社会的に取り組む必要性があると国レベルで認められるようになってきたのだ。
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 しかし、個々人の自殺や遺族に対する理解はいまだ乏しく、誤った情報を鵜呑みにしていることが多いといわれる。例えば、以下の説明のうち正しいものを判定できるだろうか。
・自殺の動機で最も多いのは経済問題である
・自殺の多くは何の前兆もなしに起こる
・自傷行為を繰り返す人ほど死なない
・自殺未遂者はそっとしておいたほうがよい
・遺族の苦しみは時間が解決してくれる
・自殺は個人の哲学、死生観の問題である
・自殺を企てる人の気持ちは変えられず、自殺を防ぐことは不可能である
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「いずれも『ノー』が正解です。 ちなみに2006年に警察が行った調査によると自殺の動機の一位は健康問題(42%)、二位が経済・生活問題(29%)、三位が家庭問題(10%)となっています」
と横浜市立大学附属病院神経科(精神科)の河西千秋病棟医長(准教授)は説く。
 同附属市民医療センター救急救命センターに入院する自殺未遂患者のケアも担当し、厚生労働科学研究費補助金事業による「自殺未遂者ケアガイドライン」作成にも関わる専門家だ。
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 重症急患の2割が自殺未遂
 高度の救急救命センターには重症のけがやヤケドなどの患者が搬送されるが、実は全体の10~20%が自殺を図った人だという。
 「自殺者の約半数には自殺未遂歴があり、また未遂者を9年以上追跡した研究によると、自殺未遂者ないし自傷患者の3~12%はその後に自殺していることが確認されています。ということは、自殺未遂者を多く診る救急医療施設で自殺予防を考慮したケアを行えば予防につなげうる。そこで横浜市大では、一昨年から精神科医が救命センターに常駐し、命を取り留め意識が戻った段階から専門的なケアを行っています」
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 自殺の引き金となる危険予測因子として、自殺念思や絶望感、自殺未遂歴、家族や親族の自殺、あるいは大切な人との離別・死別、失業や経済破綻、精神疾患、がんなど進行性の重い病気、身体機能の喪失などがある。これらは少なくとも医療関係者の間では知られるようになった。
 また、最近ではうつ病患者は自殺の危険が高いとも流布されているが、現実に自殺者の多くがうつ病・躁うつ病であり(約30%)、依存症、統合失調症、人格障害が各十数%ずつを占めていたことも、既遂者の調査研究から明らかにされているという。
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 つまり、ある程度の知識とその人への関心があれば、素人でも自殺の危険を感じる想像力が働くということだ。河西医師らは自殺予防活動普及のため「自殺予防のための手引き」を学校関係者用、プライマリ・ヘルスケア従事者用など利用者別に作成した。詳しくは同大学精神医学教室(℡045-787-2667)へ。
 救急救命センターにおける精神科医の関与は、自殺未遂者本人はもちろん、彼らを抱える家族、担当する医療スタッフにも不可欠だが、多くの病院では経済的理由などから夢のまた夢なのが現状だ。河西医師らの活動がよきモデルとなり普及することが期待される。
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 7月24日の日記、札幌こころのセンターに書いたように、3年前に、札幌美容形成外科を受診なさった患者様が自殺されました。
 私は、その患者様を手術していませんが、もし私が手術していれば死ななくてもよかったのか?…と今でも心に残っています。
 醜形恐怖症という‘病気’は心の病気です。社会不安障害という概念に入る精神疾患です。
 美容外科を開業していると避けて通れないのが、醜形恐怖症の患者様です。
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 精神神経科医と密接に連携をとって治療に当たります。
 これから美容外科を志す先生は、必ず頭に入れておいて下さい。患者様が亡くなると、自分が手術したしないにかかわらず、とても悲しくなります。
 このような‘病気’があることを認識してください。自殺率が高いことも…。

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