医療問題

他科再建(たかさいけん)

 他科再建(たかさいけん)
 他科手術(たかしゅじゅつ)
 聞き慣れない言葉だと思います。
 私が形成外科医になった、
 30年前には無かった言葉です。
 形成外科医が、
 自分が所属している科
 (つまり形成外科とか整形外科など)
 以外の科から依頼されて、
 再建手術を行うことを言います。
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 形成外科のことを、
 英語では、
 Plastic and Reconstructive Surgery
 (プラスティック アンド リコンストラクティブ サージェリー)
 といいます。
 プラスティックはプラスチックのことです。
 形をつくるという意味です。
 リコンストラクティブは、
 再建するという意味です。
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 再建という言葉は、
 赤字再建団体
 の夕張市にも使います。
 医学で再建というと、
 ガンや腫瘍(しゅよう)を取った後で、
 その部分を修復(しゅうふく)することを言います。
 形成外科には、
 私のように美容形成外科学といって、
 二重まぶたを作ったりするような分野と、
 再建外科学という、
 元に戻す修復手術の分野があります。
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 私の経験上、
 他科再建で一番多いのが、
 耳鼻科や口腔外科からの依頼でした。
 耳鼻科の先生が、
 顔や喉(のど)のガンを取って、
 その後を修復する手術です。
 形成外科の組織移植の技術や
 マイクロサージャリーという、
 血管吻合の技術が生かされます。
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 一般的な大学病院では、
 内科、外科、整形外科、皮膚科というは、
 それぞれ独立しています。
 教授を頂点とする教員も、
 病棟も、
 研究室もすべて別です。
 つまり、大学病院という大きな市場
 たくさんの商店が集まっていると考えてください。
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 一般の企業や商店でも…
 他の企業と合同事業をすることがあります。
 商店が忙しい時に、
 派遣会社に応援を頼むこともあります。
 そういう時には…
 もし、不測の事態があったら、
 責任は誰がどの割合で取るとか、
 費用はどのように分担するとかを、
 契約書で詳しく決めてからはじめます。
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 ここ10年くらいの間に、
 大学病院や大病院には、
 リスクマネージャーという制度ができました。
 医療安全委員会などもあります。
 つまり医療を安全に行うために、
 どのように業務を進めるか?ということを、
 詳しく決めています。
 ところが、
 私の知る限りでは…
 他科再建の責任をどちらの診療科が、
 どのように分担するか?
 というような取り決めは無いと思います。
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 大部分の大学病院や大病院では、
 他科再建の依頼は、
 電話か院内の‘他科受診’の手紙で、
 形成外科医の犠牲的精神で行われています。
 つまり…
 他科から頼まれて、
 12時間もかかるような手術をしても…
 時間外手当も、
 休日出勤手当ももらえないのが、
 私が勤務した大学病院であり大病院でした。
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 増えるのはストレス
 医療事故を起こさないように…
 という心配です。
 唯一、得られるのは…
 手術が成功して、
 患者さんが元気に退院される時の、
 先生、ありがとうございました。
 というお言葉による、
 満足感だけです。
 こんな状況下で、
 一人の形成外科医に責任を押しつける、
 山形大学の姿勢に問題があります。
 荻野先生には何としても
 勝訴していただきたいです。 

“他科再建(たかさいけん)”へのコメント

  1. 函館の看護師 より:

    なんだかこんな話を聞くと、本当に患者さんのためにと思ってくれている病院ってあるのかな?と思います。
    大きな病院はちょっと立派な理念を掲げる割に、くだらない問題が多すぎます。

    誰のせい?そんなことに時間をかけるなら本当に患者さんの想いにこたえることが出来るのはどういうことかと考えてほしいものです。

    責任を押し付けるのではなく一人でも貴重な医師の安心して働ける環境を作ることが大学病院に一番大切なことと思います。(あくまで私の客観的な意見です)

  2. さくらんぼ より:

    ありがとうございます。私は医学的な事はわからないので(先生のBLOGで知り得た事はわかります)
    証人の山大のたった一人の形成外科医K先生に弁護士や 裁判官から 出た質問で おおかったのは「コンパートメント症」「認識」「サブリスクマネージャーとして」 という言葉だったと思います。 大学側の体制というより 争点が 今だコンパートメント症 だったようです。
    K先生は証言の後、私の前に座られました。皮膚科の患者様と 皮膚科の担当医から 一度は断った手術を 懇願され引き受けたそうです。 たった一人の形成外科医であるK医師の 二重生活をしているような 病院での立場という言葉が胸に突き刺さりました。他の皆さんは わかってくれたでしょうか?その気持ちを・・・
    コンパートメント症と気付かれた時皮膚科の主治医・助教授の先生と3人で 今後の治療について話し合われたときK医師は 「病院に報告してください」といったそうですが、皮膚科の先生は以前もそのような事で報告したが「病院は皮膚科の味方にはなってくれなかったから 報告はしない」と言われたそうです。
    その後の事も聞きましたが 書ききれません。デブリードメント手術という言葉が山大弁護士からでましたがどのような手術なんでしょうか?植皮とはどんな事ですか? なんだか 形成外科医の先生がかわいそうでした。悪いのは 病院の体制です。 K先生 本間先生も応援していてくださるので 頑張ってください。

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