ボトックスとは
ボトックスは米国アラガン社が商標権を持つ薬品名です。ボツリヌス菌から抽出した物質で1977年に米国の医師がはじめて斜視の治療に用いました。その後、眼瞼痙攣、片側顔面神経麻痺などの治療に用いられるようになりました。日本では1996年に眼瞼痙攣に対して厚生労働省から承認を得ています。ボトックスの作用機序は神経から出る信号を筋肉に伝わらなくすることです。
ボトックスの種類
ボトックスというのは商標登録された商品名ですのでアラガン社の製品以外は厳密にはボトックスとは言えません。アラガン社の製品にも米国製とアイルランド製の2種類があります。日本で認可されているのは米国製の製品です。残念なことに日本では美容目的で正規輸入されたボトックスを使用することは禁止されています。また正規輸入されたボトックスは1本約10万円と非常に高価です。日本の美容外科で使用されているアラガン社製ボトックスは大部分がアイルランド製で医師の責任で個人輸入されたものです。
ボトックスと同じ効力を持つ製品が数種類あります。一番多く出回っているのが中国製のBTXAです。成分は豚コラーゲンが入っているため、アレルギー反応が比較的高率にみられること、品質管理上の問題があり品質にばらつきがあるなどの問題点があります。ただ安価なため中国製を使用しているクリニックは沢山あります。Neuronoxという韓国製も最近みられるようになりました。当院で使用しているのはDysportという英国イプセン社製の製品です。英国から航空クール便で個人輸入しています。製品の純度が高く効果が確実でバラツキがありません。
ボトックスが効果的な部位
ボトックスは顔の表情筋に注射すると筋肉が収縮しないため笑いジワや口唇のシワができにくくなります。特に効果的なのは眉間の縦ジワや目尻の『カラスの足跡』と言われる笑いジワです。おでこのシワにも効果的です。
ボトックスの副作用
ボトックスの一番大きな副作用は、効きすぎて表情が乏しくなることです。中村うさぎさんが書いていましたが、ボトックスを注射した後で『うさぎさん笑ってないね!』と言われたそうです。笑顔が売り物である女性にとって笑えない副作用は笑っては済まされません。慣れない先生がすると笑えなくなって『二度とボトックスはご免です』というお気の毒な方がいらっしゃいます。当院でボトックスをなさっていらっしゃる方は年に2回程度必ずいらしていただいています。うまく利用するとこれほど良く効く魔法の薬はありません。私の家内も年に2回定期的に注射しています。
ボトックスが効かないシワ
鼻唇溝部の法令線といわれる深いシワなど表情に関係ないシワにはボトックスだけでは効きません。コラーゲンやヒアルロン酸などの注入剤と併用することにより優れた効果が発揮できます。またシワができないことにより注射した注入剤が拡散しにくいので高価なコラーゲンなどが長持ちします。
効果の持続期間について
ボトックスの効果の持続期間は約6ヵ月です。注射して2~3日後から効果が自覚できます。効果は3~4ヵ月目までが最高で徐々に効きが悪くなってくるのが普通です。通常約6ヵ月といわれていますが中には一年近く効果が持続した方もいらっしゃいます。自然に元に戻るので安全だとお考え下さい。普通は年に2回程度来院され注射を受ける方が大部分です。どんなに高価な化粧品を使ってもシワは消えません。クリニックでしてもらう最高のお化粧だと考えていただければ満足できると思います。