医学講座
皮膚ガンの手術
『ガンです。手術が必要です』と言われて驚かない人はいません。『まさか?ガン?手術?』と普通の人は狼狽(ロウバイ)し、どうしよう?と思います。
胃ガンができたとします。ガンは健康診断で見つかっても、更に内科で精密検査をします。ガンの組織型、つまりどんなタイプのガンか?悪性度は?他の臓器への転移は?などなど、詳しく調べます。最近はPET(ペット)という診断方法もあり、かなり詳細に調べられます。
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手術の適応が決まると、外科へ紹介されます。外科病棟へ転科して、手術前の検査・処置をして、いよいよ手術です。
白い巨搭の財前教授が外科。里見助教授が内科。二人の関係が外科と内科の関係です。
外科はメスを持って、病巣を切除し、切除した部位は縫合するか他の臓器で再建します。財前先生のような消化器外科でも形成外科と一緒に手術をすることもあります。私も消化器外科の先生と手術をしたことが何度もあります。
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皮膚ガンだけは、皮膚科の先生が診断も手術もする施設があります。札幌医大がそうでした。私の直接の上司は前任の皮膚科J教授でした。
彼の主張は『皮膚科医はメスを持たなければならない』でした。彼は悪性黒色腫というホクロのガンで有名でした。
彼の手術は形成外科から見ると、お世辞にも上手とは言えませんでした。皮膚移植をすると植皮が生着しないことがよくありました。
患者様は‘教授’が手術したのだからと諦めていましたが、中には形成外科へ助けを求める方もいらっしゃいした。
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私が在籍していた頃の北大病院は皮膚科と形成外科がとても仲良しでした。当時の皮膚科教授であった三浦先生が形成外科を作ってくださいました。
私の恩師である大浦名誉教授は、形成外科ができたのは、三浦先生のおかげといつも感謝していまいした。
当時の北大では、皮膚科が診断して、形成外科が手術する。小さなガンでしたら皮膚科が手術して形成外科が助言するという分業がうまくできていました。
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私の恩師である、市立札幌病院院長の吉田哲憲先生は皮膚ガンの権威です。私が札幌医大に在籍していた時も何度もご相談していました。吉田先生に助けていただいた患者様もたくさんいらっしゃいます。
形成外科医の中でも、皮膚ガンを専門にしている先生は多くありません。大学病院の形成外科でも皮膚ガンは取り扱わない施設もあります。
私は皮膚科医がメスを持っても悪いとは思いません。ただ、ただ切るにしても形成外科医がするのと皮膚科医がするのでは雲泥の差があります。
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良心的な皮膚科医は、形成外科医と仲良くして、手術の時にも協力を仰ぎます。
どのような手術法で切って、どうやって再建すると、患者様にとって最良なのかを考えてくれる先生がベストです。
自分の専門外のことは、信頼できる専門家に任せて、仲良く治療できる先生がベストです。
私は皮膚科は専門ではないので、皮膚科を標榜していません。皮膚病の方は信頼できる皮膚科専門医にご紹介しています。皮膚腫瘍については、診断も手術もしていますが、診療所でできる手術には限界があるので、皮膚ガンの治療は市立札幌病院にお願いしています。