医学講座
焼身自殺の悲惨さ
平成20年5月10日の北海道新聞朝刊で、
私の日記(ブログ)のことを取り上げていただきました。
平成20年5月1日に書いた硫化水素自殺についてです。
記事を書いてくださった、記者さんに感謝します。
これで少しでも、硫化水素自殺が減ることを願っています。
■ ■
硫化水素自殺よりもっと悲惨なのが…
焼身自殺です。
平成19年5月29日の日記に書いてあります。
もう一度繰り返します。
焼身自殺は簡単に死ねると思うかもしれません。
ところが自殺法の中で、
一番最後まで意識があって苦しむのが焼身自殺です。
■ ■
人間や動物が死ぬ時は心臓や呼吸が止まり、
脳や臓器に酸素が行かなくなって死にます。
熱傷を受傷しても簡単に心臓は止まらず、
意識もあります。
自分の体が黒焦げになって、
手も指も炭のようになっているのが見えます。
■ ■
何度もなんども手術を繰り返しても、
‘絶対’に元のキレイな皮膚には戻れません。
指もなくなってしまいます。
さらに、自殺は自己の重大な過失による外傷なので
原則的に健康保険は使えません。
救命救急センターに入院すると、
入院費が最高で一ヵ月に1,000万円にもなることがあります。
■ ■
私が治療を担当させていただいた患者さんで
数ヵ月に及ぶ治療費が2,000万円にもなって、
両親が家を売って支払った症例もありました。
残念なことに結局その方は亡くなりました。
医療従事者にとって…
懸命に治療したけれど命を救えなくて、
治療費の借金だけが残った症例はとても悲しくつらいものです。
(ここまでが、昨年の日記の内容です。一部改変)
■ ■
平成20年5月10日、朝日新聞朝刊には、
自殺で死に切れなかったので、
人を殺して死刑にしてもらうために…
殺人を犯したという、記事が掲載されていました。
自殺者は増えており、避けては通れない問題です。
自分が死にたいから、他人を殺して死刑にしてもらう…
考えただけでも、ぞっとします。
■ ■
われわれ医療従事者、
特に救急医療に携わった者は、
自殺の悲惨さをよく知っています。
自殺したら…
こんなになっちゃうょ!
こんな屍(シカバネ)になっちゃうょ!
それでも、そんな死に方を選ぶの?
という情報が少ない気がします。
■ ■
医学部6年間の教育の中で…
焼身自殺をしたら、
こんなになってしまうという授業はありません。
熱傷(ヤケド)についての講義はありますが、
どんな自殺法で…
どんな状態になるか…?
法医学の講義を真面目に聴いていると、
少し出てくる程度でしょうか?
それでも、救命救急センターで行われている…
広範囲熱傷(重症のヤケド)の実態はわかりません。
■ ■
焼身自殺をすると…
自分の体が、
動物の丸焼き(トリとかウシ・ヒツジなど)と同じになります。
激しく焼けると、顔かたちもわからなくなります。
一部だけ激しく焼けて、
両下肢の切断になってしまった方もいらっしゃいました。
とにかく、身体の損傷が一番激しい死に方の一つです。
■ ■
また、焼身自殺を自宅や建物の中ですると…
火災になります。
自殺による火災には、保険がおりません。
そればかりか、高額の損害賠償請求が待っています。
つまり、残された家族は高額の治療費の他に
自殺の巻き添えで火災に遭った人から…
莫大な金額を請求されます。
火災で他人を殺してしまったり…
消火作業に当たった消防士さんが殉職なんてこともあります。
■ ■
それだけ焼身自殺は悲惨です。
自殺が未遂に終わり…
全身大ヤケドで生き残ると…
生涯そのキズは元には戻せません。
硫化水素自殺も
焼身自殺も
決して楽な死に方ではありません。
人殺しをして死刑になろうと思っても…
簡単に死刑にはしてくれません。
長い裁判が待っています。
国や厚生労働省は、
自殺予防をもっと積極的に取り上げて欲しいです。
マスコミの方も、よろしくお願いいたします。
本間先生から教えて頂かなかったら 分からなかったことばかりです。治療費がそんなにかかるものとは知りませんでした。 これからも いろいろ 教えてください。
自殺未遂の治療費が保険外というのは初めてききました。
電車の飛び込み自殺は遺族が多大な賠償金を払わなければならないというのはきいたことがありますが・・・・
病気も自殺も予防が大事ですね。
硫化水素や焼身自殺の悲惨さはよくわかりました。硫化水素自殺は棺桶までうんこの臭いになるんでしたよね。でも私の回りでは 首吊り・投身・入水・農薬飲用自殺の方がおります。一番多いのは首吊りです。 自殺をふせぐためにも ぜひ その悲惨さも教えてください。また死を免れた場合の後遺症など・・ 自殺は保険が効かないとはしりませんでした。
先生のBlogで一人でも多く思いとどまり生きて欲しいと願ってやみません。