医学講座
第83回日本形成外科学会北海道地方会①
今日(平成24年2月25日土曜日)、
第83回日本形成外科学会北海道地方会が、
北海道大学医学部学友会館フラテホールで開催されました。
今日の札幌は雪。
最高気温-3℃
最低気温-8℃
寒い一日でした。
■ ■
今日の北大は、
入学試験の前期日程初日でした。
寒い雪の中で、
たくさんの受験生ががんばっていました。
明日も入学試験があります。
■ ■
今日の形成外科地方会で、
一番印象に残った発表について書きます。
劇症型溶連菌感染により切断を余儀なくされた前腕筋肉内血管奇形の経験
患者さんは、小さな子どもさんです。
1歳頃から腕が少し腫れているのに気づいていました。
大きくなってから、筋肉内静脈奇形と診断がついて、治療をはじめました。
治療後の定期受診時には異常ありませんでした。受診3日後より発熱と前腕の疼痛が出現しました。
のども痛かったので、風邪かなぁ?と思ったようです。
治療しれくれた病院の先生に相談し、地元の病院の形成外科を受診しました。
形成外科を受診した時には、数ヵ月前に治療した腕が少し痛かったようです。
特に患部に異常は認められず、抗生物質を処方されて帰宅しました。
受診した日の深夜になって意識障害が出現し、小児科に救急搬送されました。
小児科に入院時、前腕の発赤腫脹を認め、咽頭・尿・血液より溶連菌が検出されました。
劇症型溶連菌感染症と考えられました。
発赤が肘上へ拡大し、全身状態が悪化しました。
小児科、整形外科、形成外科で検討し、救命のため上腕で切断しました。
一時は危険な状態でしたが、切断した翌日より解熱し術後15日目に退院となりました。
病理検査では皮下組織から筋膜・筋肉にかけて広範にグラム陽性菌が検出されました。
■ ■
劇症型溶連菌感染症とは、
人喰いバクテリアと呼ばれる、
とても恐ろしい菌です。
溶連菌はどこにでもいる菌です。
それが突然変異して…
恐ろしい人喰いバクテリアになります。
■ ■
高度救命救急センターに搬送されて、
大がかりな手術をしても、
救命率が低く、
亡くなる方がたくさんいらっしゃいます。
原因もわかっていません。
■ ■
私は形成外科医を30年以上やっていますが、
腕の血管異常で、
劇症型溶連菌感染症ははじめて聞きました。
今日の学会に出席した全員が…
切断しなくても救命できなかったのか…?
…と思いました。
■ ■
つらい選択だったと思います。
でも…
もし切断していなかったら…
患者さんは亡くなっていたと思います。
自分の孫だったら…と思うと…
胸が痛みます。
■ ■
形成外科を受診した時に…
検査をしてもわからなかったと思います。
私が地方病院の形成外科部長だったとしても…
同じ結果だったと思います。
劇症型溶連菌感染症の診断には、
血液をとって培養する検査が必要です。
■ ■
小さな子どもさんから…
血液培養の血を採るのは大変です。
患者さんの苦痛も伴います。
培養検査には時間がかかりますし、
グラム染色という方法で見ても、
菌が見つからないこともあります。
■ ■
この院長日記を読んでくださった先生は、
劇症型溶連菌感染症と腕の筋肉内血管奇形について…
覚えておいてください。
100年に一度でも…
このような患者さんを診る可能性があります。
学会に出席して勉強することは…
やはり必要だと痛感した一日でした。
“第83回日本形成外科学会北海道地方会①”へのコメント
コメントをどうぞ
単純な疑問で申し訳ないのですが、上記のような症例の場合、グラム染色や培養で診断をつけるほかは、やはり知識と経験から判断されるほかには診断方法は難しいのでしょうか?
学会への参加や情報の共有は有効な診断につながるものなのですね。
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
小さな子どもさんが風邪で喉が痛くて、腕も痛いというのは珍しい症状ではありません。培養検査を取っても結果が出るまでには数日かかります。グラム染色は検査室ですぐにしていただければその日にわかりますが、われわれのような開業医では患者さんがいる間には無理です。やはりおかしい!何か変!…と思うことが大切です。一度でも悲惨な例を見ていて、頭の片隅にでもあるとおかしい!何か変!と感じるようになります。実際の救急現場では劇症型溶連菌感染症による壊死性筋膜炎はきわめて死亡率が高いです。
学会お疲れ様です。 劇症型と聞くと私の同級生で10年くらい前 劇症型溶連菌感染だかで突然他界された方がいました。持病があった方でしたが、あまり突然でびっくりしました。
子供なら なおさらわからないですよね。風邪くらいで大きな病院にはいきませんし。かと言って神経質になりすぎるのも、、難しいです。