医療問題
安心してできる‘お産’
札幌市産婦人科医会(遠藤一行会長)が
札幌市の産婦人科二次救急からの撤退を、
市に申し入れています。
「各病院の負担が重く、これ以上は担いきれない」
という現場からの切実な声です。
産婦人科医の減少で二次救急を毎日交代で引き受ける医療機関が、
四年前の14から5ヵ所も減少しました。
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各医療機関の担当回数が二週間で1回から
一週間で1.3回程度に増え、
担当医から
「産婦人科は慢性的な人手不足で、
受け持ち患者の診療と出産で手いっぱい。
これ以上、救急を分担できない」と悲鳴が聞こえてきます。
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平成20年3月5日の北海道新聞朝刊に、
これについて、
札幌市の担当者と遠藤一行先生の
それぞれのコメントが掲載されています。
札幌市の言い分は、一晩に来る患者数が眼科より少ないので、
緊縮財政の札幌市には、予算がない。
妊婦さんは、何かあっても、かかりつけ医に行くので
行政が産婦人科救急医療を整備する必要がない。
という言い分に聞こえました。
■ ■
札幌市の言い分で気になったことがあります。
産婦人科医会が求めた、
分娩費用を払わない‘生み逃げ’に
遭った時の費用を何とかして欲しいというものです。
札幌市は、市が負担すると、
‘どうせ市で負担してくれるのだから…’
と‘生み逃げ’する人が増える恐れがあるので、市では負担しない。
という理論です。
さすがは、弁護士さん出身の上田市長の理論ですね。
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医療側の私に言わせると…
確信犯的に‘生み逃げ’する人がいないとは言いません。
ただ、出産費用を払いたくても、
払えない人がいるのではないでしょうか?
社会保険にも、
国民健康保険にも、
入っていない妊婦さんがいるのではないでしょうか?
少子高齢化対策を真剣に考えているのなら、
分娩費用はすべて国費負担。
なんて政策があってもよいのではないでしょうか?
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保険に入っている人は、
社会保険や国保から、直接、病院やクリニックに支払われる。
保険に入っていない人は、
国費で分娩費用を賄う。
漁船に当て逃げする、軍艦を造って維持する費用や
道路の予算で、道路以外の物を買うお金を倹約すれば…
出産費用、全額国費負担政策はできないのでしょうか?
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このままだと、産婦人科医を目指す医師や医学生はゼロになります。
安心してお産ができる病院やクリニックがなくなります。
いくら志(ココロザシ)の高い医師でも、
夜も寝ないで働いて、神経をすり減らしてリスク管理をして、
挙句の果てに、‘生み逃げ’されて自分の病院は倒産では…。
産婦人科なんて、やってられるかって思いませんか?
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何度も書いていますが、お産にはリスクがつきものです。
100%安全なお産なんてありません。
産婦人科は、次の日本を作るために、なくてはならない診療科目です。
札幌市単独では無理だと思います。
国で、産婦人科(特に産科)医療をもう少し真剣に考えて欲しいと思います。
札幌市内の民間病院でお産をするには、
予約金35万円を前払いしなくてはならないようです。