医学講座
脂肪吸引で心肺停止_1億3362万円
院長日記でご紹介した、
美容医療裁判の本2019
埋没法で感染_2795万円
…の続きです。
美容外科手術で重篤な後遺障害や死亡事故があります。
手術を受ける側の患者さんはくれぐれも注意してほしいです。
■ ■
美容医療で事故が起きると大変です。
保険診療のふつうの医療でも死亡事故があります。
自分の身体をきれいにしたいと思って受けた美容医療で、
心肺停止や蘇生後脳症なった例がいくつもあります。
簡単に脂肪吸引はできません。
脂肪吸引をすることで、
脂肪が肺につまる肺塞栓はいそくせん
…という合併症があります。
■ ■
美容医療裁判の本2019に掲載されていた、
裁判例です。
判タ1415号 379頁
東京地裁判決 平成25年3月14日
判タ1415号
…というのは、
判例タイムズという雑誌の1415号です。
東京地裁平25.3.14判決
美容外科クリニックでの脂肪吸引手術中に,患者が心肺停止状態となり,蘇生後脳症となったことについて,執刀医の麻酔管理上の注意義務違反を認めた事例
■ ■
この事件を検索すると、
平成23年(ワ)第10084号
東京地裁民事第35部
…という、
損害賠償請求事件が出ます。
脂肪吸引手術中に心肺停止状態となり、
大学病院に救急搬送されたが、
蘇生後脳症になった事故です。
■ ■
麻酔は、
硬膜外麻酔、
静脈麻酔、
吸入麻酔で行われました。
手術中に、
フェンタニル、
プロボフォールが追加投与され、
その後に舌根沈下によるイビキ様呼吸、
SpO2が68%まで低下したようです。
■ ■
イビキ様呼吸が出た時点で、
すぐにマスクによる酸素投与と換気をしていれば、
心肺停止にはならなかったのに、、、
…と私は思いました。
手術を担当したのは、
なんちゃって医ではなく、
技量を持った美容外科医だったと想像します。
■ ■
事故は一瞬で起こります。
ちょっとした変化に気づくことが大切です。
モニターも必要です。
ふつうの病院で、
ふつうの手術をする時にも事故は起こります。
医療事故裁判の本を読んで、
手術をする側も、
手術を受ける側も勉強するのがいいです。
簡単な手術はありません。
私も事故を起こさないように毎日気をつけて手術をしています。
“脂肪吸引で心肺停止_1億3362万円”へのコメント
コメントをどうぞ
「事故は一瞬で起こる」
本間先生がいつもおっしゃるように
確認して小さな変化にも気づき
対応するのが事故を防ぐことに
なるのでしょうか。
以前、口腔外科で手術を受けた時に
全身麻酔より静脈内鎮静法の方が
身体に負担が少ないと説明して
いただきお願いしましたが、
手術を受ける側も簡単に考えず
勉強しなくはならないと思いました。
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。気管内挿管をしてする全身麻酔は、静脈麻酔よりも安全なこともあります。この事故の患者さんも気管内挿管やラリンゲアルマスクという救命救急士が使う管を使っていれば、イビキ呼吸もなかったと思います。静脈麻酔もしっかりとした先生がしないと危険です。おそらくこの患者さんは硬膜外麻酔と静脈麻酔の併用で、静脈麻酔で投与したフェンタニルとプロボフォールが原因で呼吸抑制になったと思います。残念なことです。
脂肪吸引が死亡吸引になったとの
本間先生のお言葉が忘れられません。
私も脂肪吸引したかったですが
怖くてやめました。
脂肪吸引は麻酔科医と美容外科医
2人でするのではないのですか?
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。常勤の麻酔科医がいる美容外科は少ないです。この事故の麻酔は硬膜外麻酔と静脈麻酔です。麻酔科医と美容外科医の2人で脂肪吸引をする美容外科は少ないと(私は)思います。麻酔器もない美容外科があります。
怖くて手術したくなくなる内容ですね。母は血栓予防のストッキングが痒くて取ったら肺に血栓が飛び大騒ぎになりました。脂肪もそんな感じなんでしょうか?
山形は季節外れの雪で義母の病院でした、
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。お母様の血栓は大変でしたね。脂肪塞栓は脂肪吸引で壊された脂肪が肺につまる病気です。心肺停止になった原因は麻酔薬投与による呼吸抑制です。私はフェンタニルは麻薬で管理が大変なので使いません。麻酔科の時に使っていましたが使用済みアンプルの管理も大変でした。季節外れの雪は大変ですね。お義母様お大事になさってください。