医療問題

薬害肝炎

 血液製剤による肝炎が問題になっています。
 新聞報道にはあまり名前が出てきませんが、問題の製剤を作って売ったのは、ミドリ十字という会社でした。
 赤十字(日赤)のマークが赤いです。ミドリ十字のマークはミドリでした。血液製剤では圧倒的なシェアを持っていました。
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 私はフィブリノゲン製剤を使ったことはありませんが、免疫グロブリン製剤は使いました。
 重症の外傷、特に熱傷では重篤な感染症を起こします。今でも、免疫グロブリン製剤は使われています。
 ミドリ十字の免疫グロブリン、ヴェノグロブリンI(アイ)は、日本で一番良いと言われていた製剤でした。
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 ミドリ十字については、薬害エイズを作った会社だとか、フィブリノゲン製剤で肝炎を作ったとか、たくさんの批判があります。
 ミドリ十字のマイナス面だけが報道されていますが、血液製剤の研究・開発では優れたものを持っていた会社でした。
 問題があったのは厚生労働省との癒着です。優秀な社員もいましたが、天下り官僚が悪かったように思います。
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 私が市立札幌病院に勤務していた時に、事故で下腿がグチャグチャになってしまった子供さんが搬送されて来ました。
 整形外科の先生と一緒に手術をして、下肢の切断は免れました。
 重篤な感染症を起こし、救急部でミドリ十字のヴェノグロブリンIを投与しました。
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 幸い、感染症はおさまり、下肢も切断しなくて済みました。
 極めて重症でしたが、輸血は行いませんでした。
 救急部から、私が勤務していた病棟へ転科して、皮膚の処置とリハビリを行っていました。
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 ある日、C型肝炎の抗体検査をしたところ、輸血もしていないのに陽性になっていました。
 当時は肝炎ウイルスそのものを検査することは、保険ではできませんでした。
 C型肝炎の抗体(HCV抗体)が陽性ということで、C型肝炎に感染したことが考えられました。
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 輸血もしていないし、肝炎にかかるような薬剤も投与していませんでした。
 お父さん、お母さんの血液も検査してみましたが陰性でした。
 いろいろ検査したところ、ヴェノグロブリンIが疑われました。
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 薬剤の添付文書を読んでも、ヴェノグロブリンIを投与して、HCV抗体が陽性になるとは書いていませんでした。学会報告もありませんでした。
 ミドリ十字に電話で問い合わせたところ、あっさりと因果関係を認めました。
 そして、HCV抗体が陽性になっても肝炎にはかからないと説明を受けました。
 ヴェノグロブリンIを製造する時に、HCV抗体が陽性の人の血清を使ったのが原因でした。
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 私はミドリ十字本社(大阪)から責任者を札幌まで呼んで、その子供さんの両親に説明していただきました。
 ご両親は、肝炎にかかっていないし、将来も肝炎になる心配がないならと納得してくださいました。
 その子供さんは大きくなり、現在は立派な社会人になられています。
 もちろん、C型肝炎にはなっていません。
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 どんな薬にも副作用はあるし、不可抗力というのもあります。
 ただ、厚生労働省とミドリ十字という会社には隠蔽体質があり、医師や患者に必要な情報を与えていませんでした。
 ヴェノグロブリンIで命が助かった人はたくさんいます。
 優秀な研究者もいました。私が知っているミドリ十字の社員はとても優秀な方ばかりでした。
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 残念なのは、必要な情報を十分に与えてくれなかった点です。
 もし、C型肝炎にかかった人から採取した血液から作った製品だと知っていたら、私たちはヴェノグロブリンIを使いませんでした。
 知っていたのは、ミドリ十字の役員と、製造担当者。厚生労働省でした。これらの心ない人たちが、薬害肝炎を作ったと思います。

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