医学講座

熱傷用ベッドの管理

 高価な熱傷用ベッドは、
 維持管理にもお金がかかります。
 白い砂のような、
 シリコンコートした‘ビーズ’と呼ばれる、
 ‘砂’を交換する必要がありました。
 この‘砂’が高価でした。
 25年前で、
 交換には100万円以上かかりました。
 米国製の高級車は、
 維持費がかかるのと同じです。
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 患者さんがベッドに寝て、
 やけどした部位から、
 滲出液(しんしゅつえき)が出ると…
 その分だけビーズが汚れます。
 固まったビーズが、
 ベッドの底に溜まりました。
 また、
 白いナイロンの布が、
 ビーズの拡散を防いでいました。
 丈夫な布でしたが、
 これに穴を開けると、
 砂がこぼれてきました。
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 間違って、
 鋭利な刃物で布に穴をあけると、
 交換するのに何万円もかかりました。
 穴を塞がないと、
 ビーズがこぼれてきて、
 床に落ちると、
 すごく滑りました。
 とにかく扱いが面倒な器械でした。
 患者さんにも、
 ベッドの上に物を載せないでくださいと、
 お願いしていました。
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 私が医師になった、
 30年前に、
 このベッドがあったのは、 
 北大形成外科、
 美唄労災病院形成外科、
 釧路労災病院形成外科
 の3施設だけだったと思います。
 労災病院は、
 医師や看護師のお給料は低かったのですが、
 その分、設備は立派でした。
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 私は釧路労災病院形成外科にも勤務しました。
 釧路は霧の街です。
 私が赴任したのは、
 7月でしたが、
 まだストーブをつけていました。
 夏に発生する海霧のために、
 日照時間が少ないのが特徴でした。
 釧路労災病院のベッドは、
 北大より新しかったと思います。
 釧路労災病院のベッドだけ、
 この‘砂’の交換が余計に必要でした。
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 私は院長の新田一雄先生に呼ばれました。
 何でうちの病院のベッドだけが、
 毎年100万円以上もかけて、
 ビーズ交換をしなければならないのか?
 不良品ではないのか?
 ちゃんと調べなさいと指示されました。
 確かに、院長のおっしゃる通りでした。
 釧路労災病院は、
 日本一の黒字労災病院でしたが、
 それは新田先生の経営の賜物でした。
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 私はメーカーに指示をして、
 ‘砂’を米国へ送って分析してもらいました。
 その結果は、
 釧路の霧のため、
 ‘砂’が水分を吸ってしまい、
 それで劣化が早く進むということでした。
 霧が原因だったのか?
 ほんとうかどうか?
 今でもわかりません。
 私の自動車も釧路へ行って、
 マフラーが腐蝕しました。
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 それ以来、
 熱傷用ベッドは使っていない時も、
 定期的に電源を入れて、
 ビーズを動かしていました。
 市立札幌病院へ行ってからも、
 この定期的な空運転をしました。
 その成果のためか?
 それ以来、ビーズの劣化は少なくなりました。
 私は、今でも釧路労災病院の新田院長を、
 素晴らしい院長だったと尊敬しています。

“熱傷用ベッドの管理”へのコメント

  1. さくらんぼ より:

    熱傷用ベットを実際にみた事がないので わからないのですが 浅い風呂にビーズが入っていて 布張りになっているような物に 患者さんが寝るのでしょうか?実際の お風呂だと 足を伸ばして寝れないので もっと大きな お風呂のようなベットと考えていいのでしょうか・・ 砂の交換も大変なんですね。体力のいるベットなんですね。
    山形の病院にもあるのでしょうか?

    重いベットと 戦ってる若かりし頃の本間先生が 見えるようです。本間先生とベットのおかげで たくさんの熱傷患者さんが助けられたと思います。

  2. 函館の看護師 より:

    霧の影響があったのでしょうか?

    釧路は海もあって湿度もあり、気温も低めなのでそうなのでしょうか?
    高級な医療機器にも自然にはかなわないというところでしょうか?

    医療機器はメンテナンスが重要なんですね。

    とても勉強になりました。

  3. らずべりー より:

    エアーベッドは、基本的にシーツ程度しか敷かないないので、(あまり上に敷き過ぎるっエアーベッドの効果がない)
    受傷率が高く、シン出液の多い患者様の場合、シーツまで及んだりしますね。
    ビーズってどんなものなのでしょうか。かなりお高いものですね。
    病院って、基本暖房とか冷房とか入っていますよね。湿気で、そんな事になるのも?ですね。

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