医療問題
奈良の死産
平成19年8月31日朝日新聞の社説です。
奈良の死産―救急網に穴が多すぎる
一刻も早い手当てが必要な妊婦がいるのに、引き受けてくれる病院がなかなか見つからない。そんな悲劇がまたも繰り返された。
奈良県の女性が深夜、やっと見つかった約40キロ先の病院に救急車で向かう途中、車内で死産したのだ。交通事故に遭う不運も重なった。結局、11の医療機関に断られ、最後に病院に着いたのは救急車が来てから約3時間後だった。
奈良県では1年前にも、出産の途中で意識不明になった女性が、19の病院に転送を断られ、8日後に亡くなった。
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なぜこんなことになったのか。奈良県は調査するというが、きちんと究明し、その教訓を今後に生かしてもらいたい。
産科の救急患者で切迫している場合には、かかりつけの医師の診断に基づく要請で、受け入れ先を探す病院間の搬送システムがある。
ところが、今回の女性は医師にかかっておらず、妊娠の状態もよくわからなかった。このため、駆けつけた救急隊員が限られた情報をもとに、直接受け入れ先を探さざるをえなかった。
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旅先や帰省先で異変に見舞われることも少なくない。かかりつけの医師の協力を得られない場合でも、必要なら病院間の搬送システムに乗せる方法を考えておく必要がある。
もう一つの問題は、病院内での医師と事務担当者、さらに病院と救急隊との間で意思疎通がうまくいっていないのではないか、ということだ。
受け入れを打診された病院では、事務担当者が断ったところがある。そのなかには、医師はほかの患者の治療中だったので、「後にしてほしい」といったが、断ったつもりはなかったというケースもあった。電話を医師につないでいれば、受け入れることができたかもしれない、という病院もある。
どのような場合ならば、救急患者を受け入れられるのか。日ごろから医師と事務担当者、救急隊の間で話し合いを重ねておかなければならない。
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こうした事件が奈良で続くのは、人口当たりの産科医が少ないこともある。医師の負担は大きく、とりわけ夜間の救急態勢は手薄になりがちだ。
しかし、東京や大阪などでも、いくつもの病院に断られたあげく、遠くまで搬送する例が珍しくない。産科医が減り、お産を扱う医療施設も減っている中で、母親と赤ちゃんの命を救える搬送システムを再構築しなければならない。
一方で、救急医療そのものを立て直すことも考えた方がいい。お産や病気、けがを問わず、救急患者を24時間、必ずどこかの病院が引き受ける。そんな態勢を地域の医療機関と病院が連携して作り上げていきたい。
(平成19年8月31日、朝日新聞社説より引用)
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朝日新聞が言うことはもっともです。産科医が少なくなっている理由、医学生が産科医になりたがらない理由をご存知ですか?
『お父さんの仕事は当直』と子供に言われ、当直明けでも通常の業務をこなし、心身ともにクタクタになっていのが産科医です。
こんな産科医を見ると、どんなに志(ココロザシ)が高い医学生でも産科医になりたくなくなります。
産婦人科の先生は、9:00にはじまって17:00には帰れる(と考えられる…)、婦人科専門医や不妊治療専門医になります。美容外科に転向する先生もいます。
高リスクで、業務上過失致死罪に問われる産科医には誰もなりません。
医学生が産科医になりたいと思うようなシステムを作らないと日本は滅び(ホロビ)ます。