医学講座
中村純次先生の想い出
私たちの年代の形成外科医にとって、
日本形成外科学会社会保険委員会と、
中村純次先生のお名前は、
忘れることができない記憶です。
毎年春の日本形成外科学会で、
中村純次先生のお話しがありました。
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中村先生は、
東京慈恵医大のご出身で、
東京厚生年金病院で形成外科を担当されました。
日本形成外科学会の重鎮でした。
昔は…
保険で治してあげたいのに…
保険適応にならない病気がありました。
■ ■
2008年6月30日の院長日記、
山形大学の事件⑥に書いてあります。
生まれつき、
耳がない子どもさんがいます。
今は、保険適応になっていますが、
昔は耳をつくる手術が
保険適応になりませんでした。
昭和50年の毎日新聞社会欄に
「ボク、左耳がほしい。健保なぜきかないの?」
という記事が出ました。
耳がない病気の子どもさんが、
当時の田中厚生大臣に手紙を書きました。
■ ■
その翌日に、
「左耳、手術できるよ」と、
田中厚生大臣が健康保険の適応を認め、
それが毎日新聞の記事になっています。
このことを書かれたのは
日本形成外科学会で、
長い間、社会保険委員をなさった、
東京厚生年金病院の故中村純次先生でした。
中村先生が、
1982年に
日本形成外科学会25周年記念誌に書かれました。
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キレイなるために
鼻を高くする、
おっぱいを大きくする、
これはもちろん美容外科の手術です。
保険はききません。
不慮の事故や
熱傷で
キズができてつっぱっている、
そのキズを少しでもよくしたい。
これは形成外科の手術です。
形成外科では保険診療で手術をしています。
■ ■
私たちの先輩にあたる形成外科医が
長い年月をかけて保険適応にしてきた、
‘形成外科戦いの歴史’があります。
今では、
乳癌手術で無くなった乳房を再建するのに、
健康保険が使えます。
誰も不思議には思いません。
10年前は保険適応ではありませんでした。
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厚生労働省と折衝して、
形成外科の必要性や有用性を説明し、
長い年月をかけて…
保険適応を拡大してくださったのが、
故中村純次先生でした。
毎年春の学術集会では、
私たちに保険診療のしくみやルールを、
懇切丁寧に指導してくださいました。
形成外科の保険診療を発展させて下さった業績は、
日本形成外科学会にとっては、
勲一等以上の偉業だと思っています。
“中村純次先生の想い出”へのコメント
コメントをどうぞ
中村純次先生に感謝ですね。 ガンで乳房を再建したり 耳が生まれつきない方の耳を形成したり、保険が効かなくて、 昔は そのままの方もいらしたでしょう。。 患者の生活の質の向上のためにも嬉しい事です。