医学講座

遊離空腸移植後の血行モニタリング

 私が三谷正信先生と共同研究をしたのが、
 遊離空腸移植後のカラードプラエコーによるモニタリングです。
 Annals of Plastic Surgeryという米国の雑誌に掲載されています
 下の英文が抄録です。
 三谷先生の協力がなければできませんでした。
 今から16年前の論文ですが、
 現在でも有用な方法だと思います。
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 下咽頭癌などで組織を切除すると欠損ができます。
 耳鼻科、
 形成外科、
 外科が協力して、
 組織再建をします。
 朝からはじめて、
 夜までかかる手術です。
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 頭頚部癌の手術では、
 再発した症例や、
 手術前に放射線照射を受けた患者さんがいらっしゃいます。
 癌を切除するのが耳鼻科、
 空腸を採取するのが外科、
 空腸の血管を頚部の血管に吻合して、
 頚部の創を閉鎖するのが形成外科の仕事です。
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 放射線照射を受けた部位の血管は弱く、
 血管吻合をしても、
 手術後に血栓ができて血管が詰まることがあります。
 切断指の再接着でも同じです。
 手術後に血行モニタリングと言って、
 血流を調べるのが大切です。
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 切断指は再接着した指の色を見るとわかります。
 再接着した指がピンク色だと大丈夫です。
 紫色になってくるとまずいです。
 問題なのが頚部に移植した空腸です。
 移植した空腸は首の中にあるので、
 皮膚表面からは色が見えません。
 血栓ができても、
 わからないことがあります。
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 私と三谷先生が考えたのが、
 エコーで移植した空腸を見ることです。
 移植して元気な空腸は、
 首に移植しても腸の蠕動運動を再開するので、
 ぐにょぐにょと動きます
 首の外からはわかりませんが、
 エコーで見ると動きがよくわかります。
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 三谷先生の機器診断部にあった、
 高性能のカラードプラエコーは、
 移植した腸管の血流までよく見えました。
 耳鼻科と共同で手術をして、
 夜遅くに病棟に戻った患者さんを、
 三谷先生は深夜まで見に来てくれました。
 下の一番したの写真が、
 腸管をモニターしてくれている三谷正信先生です。
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 今から20年近く前の仕事です。
 現在でも、
 遊離空腸移植を実施する施設はたくさんあります。
 超音波診断機器も高性能になりました。
 私と三谷正信先生が開発した方法は、
 現在でも有用だと思います。
 下のスライドは、
 日本の学会で発表した時のものです。
 あらためて三谷正信先生のご冥福をお祈りします。
 ご立派な先生でした。
Ann Plast Surg. 2001 Dec;47(6):625-8.
Color Doppler sonography in monitoring after free jejunum transplantation.
Homma K, Mitani M, Tsubota H, Himi T.
Abstract
The authors assessed the usefulness of color Doppler imaging in the monitoring of vascular circulation after free jejunum transplantation. Seven male patients were examined daily with color Doppler sonography for the first postoperative week between 1999 and 2000. All sonographic examinations were performed with an SSD5500 ultrasound scanner. Arterial and venous signals were documented reliably in all patients. The flashing red spots around the serosal wall revealed the patency of the anastomosed artery and vein. No failures of the graft occurred. The presence of the color Doppler signals was considered sufficient to define vascular patency. The real-time monographic (B-mode) examination revealed the thickness and the plicae circulares of the jejunum wall. These monographic (B-mode) images supported the viability of the transplanted jejuna. The authors found color Doppler sonography to be a reliable and effective form of monitoring after free jejunum transplantation.



“遊離空腸移植後の血行モニタリング”へのコメント

  1. さくらんぼ より:

    空腸はお腹のどこらへんにあるのでしょうか? 移植できるなんて凄いですね。 各科が協力して成功するのですね。

    【札幌美容形成外科@本間賢一です】
    コメントをいただきありがとうございます。空腸は胃→十二指腸→空腸→回腸→大腸→直腸→肛門です。この順番につながっている小腸の一部です。ここを首に移植します。下咽頭癌でのどの奥を切除してしまうと食物を飲み込めなくなります。そのために空腸を移植します。耳鼻科、外科、形成外科が共同で手術をします。チームワークが大切です。三谷先生と仕事をした楽しい思い出です。

  2. なっちゅん より:

    3つ科が手術に携わるのですね。

    身体の中にも形成外科が必要になってくるとは……
    やはり繊細な手術なのでしょうね。

    20年前にカラーのエコーがあったのですか。
    エコーは30年前に3回くらい受けたのが
    最後で知りませんでした。

    あらためてご冥福を心よりお祈り致します。

    【札幌美容形成外科@本間賢一です】
    コメントをいただきありがとうございます。仲良く仕事をした楽しい思い出です。耳鼻科の手術で鼻の奥に腫瘍ができた患者さんは頭蓋底を処理するために、脳神経外科も手術に入りました。朝からはじめた手術が次の日の午前7:00に終了したこともありました。40代だからできた手術だと思います。

  3. すみれ より:

    20年前に論文を出すなんてすごいお医者様ですね。手術に3科の先生がついて長時間するのがすでに16年前からあったとのこと。20年以上前から手術は時間がかかるとは、わかっていましたが、改めてお医者様の偉大さを痛感しました。

    【札幌美容形成外科@本間賢一です】
    コメントをいただきありがとうございます。三谷先生は私より論文数が多く、海外でも有名なアプリを作っています。アップルストアで学生が発表するのを指導するなどふつうのお医者さんには考えられません。すごい才能でした。惜しい先生を亡くしました。ご冥福をお祈りしています。

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