医学講座
第120回日本美容外科学会学術集会(札幌)③
形成外科系の日本美容外科学会の良いところは、
さまざまなトラブル症例を勉強できることです。
今回の学会で衝撃的だったのが、
成長因子皮下注射によると思われる後遺症症例の検討
日本医科大学形成外科、野本俊一先生のご発表です。
日本医科大学形成外科には、
トラブル症例の患者さんが多く受診されます。
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野本先生の発表抄録です。
成長因子の皮下注入は医師の裁量のもと美容外科の複数のクリニックで行われているようである。しかし、外用剤を注射で用いることは全くの適用外使用であり、その効果の実験的データの蓄積もない。われわれの施設を訪れる患者の中には、皮下のしこりや皮膚の凹凸を後遺症として訴える者が多く、少なくとも想定された効果は得られないようである。今回は2症例の後遺症症例を呈示し、成長因子の皮下注入の蔓延に対して改めて注意を喚起する次第である。
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私が何度も院長日記に書いています。
フィブラストスプレーの注射です。
下眼瞼変形の原因④(注入物)
美容外科のPRP療法2013
フィブラストスプレーの皮下注射は、
劇的な効果が得られる場合もありますが、
難治性のしこりが残った症例が多数報告されています。
札幌美容形成外科にも相談のお電話やメールをいただきます。
残念なことですがしこりを治す、
良い治療法がありません。
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野本先生が発表してくださった症例の中には、
高須先生が治療した韓国の扇風機おばさんのように、
顔が大きく変形してしまった患者さんがいました。
とてもお気の毒でした。
適正に使用すれば安全。
…というご意見の先生もいらっしゃいます。
確かに素晴らしい結果もあります。
…でも私は使いません。
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メーカーの科研製薬は、
明確に反対の立場です。
今年になって出された文書です。
褥瘡・皮膚潰瘍治療剤「フィブラスト®スプレー250/500」の適正使用に関するお願い
科研製薬株式会社
弊社が製造販売しております褥瘡・皮膚潰瘍治療剤「フィブラスト®スプレー250/500(一般名:トラフェルミン)」に関し、以下の通り適正使用の推進をお願い致します。
2001年の発売以来、弊社は、医療従事者の皆様に対し、本剤の適正使用情報等の提供に努めてまいりました。
フィブラスト®スプレーは外用剤であり、人体に注射使用した場合のデータは集積されておらず、有効性・安全性は確立されておりません。
医療従事者の皆様におかれましては、フィブラスト®スプレーのご使用にあたり、添付文書に記載された効能・効果、用法・用量を遵守頂き、適正なご使用をお願い致します。
弊社は、フィブラスト®スプレーをはじめ弊社販売の医薬品等について、今後も安全管理情報の収集並びに適正使用情報の提供に努めてまいります。
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私が危惧するのは、
製薬メーカーがしてはいけないと明記している製剤を注射して、
回復することができない副作用が生じても、
どこからも補償は受けられないということです。
大手美容外科だからといって安心はできません。
そのクリニックが倒産したら最後です。
私はフィブラストスプレーの注射は推奨しません。
“第120回日本美容外科学会学術集会(札幌)③”へのコメント
コメントをどうぞ
製薬会社が注射してはならないといってる物を平気で使っているなんて信じられません。 先生のブログはこれから形成外科などを目指す研修医さんの赤本みたいなものですね。 お疲れ様でした 。
扇風機おばさんは本当にお気の毒です。
綺麗な方だったのに。
あと何回オペすれば、いいのでしょう。
闇医者なんて、怖いですね。
あとなんちゃっても。
先生が推奨しない限り、私は手を出しません。
いい例がレーシックです。
美容外科の先生も色んな考えの方がいますよね。
リスクを考えて慎重になる先生、大きなメリット【効果だけでなく売上も】にかけて挑戦する先生。
ただ、先生のおっしゃるように、メーカーがしてはいけないと明記してあることをやって、回復出来ない副作用が起きたとき、責任がとれるのかは、とても気になりますね。
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
ほんとうにいろいろな先生がいます。メーカーが添付文書でしてはいけないと明記してあるのに使うのはどうかと(私は)思います。その治療で健康被害にあった医療関係者もいます。学会もしっかりとした方針を出していません。残念なことです。