医学講座

心のキズあと

 体に残る抗体が消せないキズあとだと書きました。心についたキズもなかなか消せませんね。
 私は学生時代に精神科医になろうと考えた時期がありました。精神神経科の講義で‘心の赤字’という言葉を聴きました。人間はさまざまなストレスを受け‘心の赤字’ができます。この赤字が軽度のうちは日常生活にも支障がありませんが、どんどん増えて行くと、眠れなくなったり、体調がわるくなったりして病気になります。
 あまり知られていないことですが、救命救急センターに搬送される患者様の中には、心の病気が原因で自傷行為をしてしまう方もいらっしゃいます。外傷の治療と平行して、精神的な治療も必要になってきます。
 美容外科を受診なさる患者様の中にも、‘醜形恐怖症’といって、自分の顔が正常なのに醜いと訴える方がいらっしゃいます。わきがの臭いがしないのに臭いがすると訴える方も同様です。
 中学校や高校の時に、同級生が何気なく言った‘くさい’という言葉がずっと心に残り、それでずっと自分はわきがだと思い込んでいる方もいらっしゃいます。
 心についたキズは外から見えませんし、本人にとってはとてもつらいものです。私は心のキズを見つけたら、必ず精神科医に相談しています。手術でも治せないのが心のキズです。
 私にとって信頼できる友人の専門医がいてくれることは、とても心強くそれだけで私の心のキズも癒されます。

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