院長の休日

父の棺に入れた物

 平成30年3月14日、朝日新聞朝刊ひとときへの投稿です。
 父の棺に入れた物
 85歳で父が亡くなった。緩和ケア病棟に入院していたので覚悟はしていたけれど、いざその時が来てみたらわからないことばかりだった。18歳で家を出てから父と住んだことはない。「棺の中に入れる物をご用意ください」と言われても何を入れたらよいのやら。
 幸い父は整理整頓が得意で、あらゆる書類をファイルしていた。「私が亡くなったあと」というタイトルのファイルを開くと、父の字と子どもが描いたような父の顔のイラストが。そういえば思い出した。私の息子が小学生だったころ、おじいちゃんが死んだら一緒に何を燃やすのか、父と息子は笑いながら話していた。「おじいちゃんは英語の先生やけ英語の辞書がいるやろ」「国語の辞書もやね」「写真もたのむ」「仕事するけネクタイもいるっちゃ」「死んでからも働くんね?」「絶対ビールは忘れるなよ」。遠慮することもなく、深刻になることもなく、2人は笑いながらお葬式のことを話していた。
 それから10年以上。棺には父の希望通りのものが納まった。最後に父の口をビールで湿らせたのは大学4年生、22歳になった息子。お父さん、久しぶりのビールの味はどうでしたか。
 (川崎市 前田留美 日本語教師 52歳)
 (以上、朝日新聞より引用)

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 引越しまであと一週間です。
 役所に提出する書類を深夜までかかって作っています。
 自分の荷物はさっぽり整理できず、
 時間だけがあっという間に過ぎて行きます。
 最近は弱気になって、
 このまま死ぬかも?と感じることもあります。
 せっかく新しいクリニックを作ってくださっているので、
 簡単に死にたくありません。
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 今朝のひとときを読んで、
 これは院長日記に書いて残そうと思いました。
 私の棺についてです。
 チェリーの棺
 2007年6月19日の院長日記に書きました。
 私のお棺はダンボールで結構です。
 檜ヒノキの高級なお棺は要りません。
 どうせ燃やすのですから紙で構いません。

 私は安い棺でいいです。
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 肝心の棺の中に入れるものです。
 私は英語の辞書も、
 医学書もいりません。
 あの世に行ったら、
 もう勉強はしません。
 仕事もしません。
 死んだら働きません。
 手術もしません。
 棺の中に入れてほしいのは、
 ラベンダーのドライフラワーです。
 きっと焼ける時に、
 いい香りがします。

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