医学講座
陥没乳頭の手術法2024
今日は2024年8月19日(月)です。
昨日の乳頭吸引器2024の続きです。
陥没乳頭の手術は難しいです。
札幌美容形成外科で行っている手術は、
酒井成身さかいしげみ先生の手術法を変えた方法です。
乳管周囲を十分に剥離して手術する方法です。
授乳も可能です。
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2023年5月に発行された形成外科という専門誌に、
酒井成身先生が論文を書かれました。
陥没乳頭の手術療法-酒井法-です。
この酒井先生の論文について、
編集委員会からコメントがつきました。
『陥没乳頭の手術療法-酒井法-』に対するコメント 細川 瓦
酒井成身氏は。乳房再建や乳輪乳頭の疾患の治療において,最も有名な医師のお1人である。これらの疾患に関する論文著作も数多い。特に,重度の陥没乳頭において乳管を切断せずに手術する方法についても,これまで好成績の結果を発表されてきたし,本特集においてもそれについてご執筆いただいた。
ただ酒井氏は「この方法では軽症でも重症でもほとんどの症例は修正できており」と表現しているが,その見解は「重度の陥没乳頭を乳管を切らずに完治させることはほぼ不可能」という本誌編集委員会メンバーの認識と大きなずれがあった。そのため。編集委員会ではこの論文についてさまざまな意見が出された。しかし。学術論文というものは,世の中の常識をひっくり返すようなものほど素晴らしい。常識と違うという理由で論文を否定することは,学術雑誌の役割を否定することになる。ただ,常識を覆すような内容は。検証(追試)可能である必要がある。しかし臨床医学においては,基礎医学に比べて検証が困難である。論文に書かれた手術術式を他者が試みても「同じような結果が得られないとした場合,それをどう判断するのかは難しいのである。
本論文については,酒井法の術式の記載はされているものの。追試してその成果を確認できるほどの詳細な記述にはなっていないのではないかという意見が大勢を占めた。そもそも。手術術式の詳細を文字で表すということ自体に無理があるのだろう。動画なども用いて手術の詳細が読者に伝わるようにしてほしいが,期限の定められた特集企画の論文であるため無理と判断して。このまま掲載することにした。
なお,重度の陥没乳頭がこの酒井法によって突出するというメカニズムについて,酒井氏に以下のように質問した。「重度の陥没乳頭が術後突出した場合,乳頭先端の位置は術前後で1~2cmほど前方に移動するはずです。短縮した線維組織を切断して乳管だけにしさえすれば,乳管はそれほどに伸展性に富んだ管なのでしょうか? それともこの疾患では。短縮した線維組織の中で乳管は蛇行して存在し,線維組織のみを切断すれば。その蛇行していた乳管が直線状になるため,1~2cmも伸びるのでしょうか? そのことに関する先生のご見解も必要と考えます」。これに対して。「乳頭に深く入り剥離するので,より乳腺に近い部分から伸ばせる状態で突出できている状態です。乳頭全体が伸びると乳管周囲も伸ばしやすくなります。」という回答が酒井氏からあった。この論文には記載されていないこのような見解も参考にしながら,今後この手術法に関するしっかりとした検討が行われ,この手術法に対する評価が学術誌上で定まっていき,重度な陥没乳頭に悩む患者に還元されていくことに期待したい。
本誌編集委員長
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編集委員会からコメントがつくほど難しい手術です。
陥没の程度は患者さんによってさまざまです。
乳管周囲を十分に剥離するのがポイントです。
このコメントについて学会で酒井成身先生と話したことがあります。
酒井先生の考えも私の考えも同じです。
授乳できるように手術するのが私たちの役割です。
重度の陥没乳頭を乳管を切らずに完治させることはほぼ不可能
…ということはありません。