医学講座

手術室の掟2

 手術を安全に遂行するために、手術室にはさまざまな掟があります。昨日は挨拶について書きました。
 手術をするには、麻酔をかける必要があります。麻酔薬は手術の苦痛を取り除いてくれる有用な薬ですが、使い方を誤ると生命の危険を伴うことがあります。
 私が麻酔科研修で習ったことは、薬の誤認を防ぐことです。注射器に詰めてしまえば、みな同じ無色透明の液体が大部分です。
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 麻酔科や手術室では、注射器に詰めたら必ずシールを貼って間違いを防ぎます。薬によっては最初からシールがついている製品もあります。
 麻酔に使う薬は、希釈して使う場合も多いので、希釈した場合は希釈した濃度も書きます。
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 麻酔科医や術者の指示で、薬剤を注入する時は必ず復唱します。
 麻酔科医:『それでは看護婦さん、プロボフォールを10cc入れてください』
 看護師:『はい、プロボフォール10cc入ります』
 麻酔科医(患者様へ):『点滴から麻酔のお薬が入りますので眠たくなります』
 ミルクのような白い液体が点滴から入ると、患者様はあっという間に眠ってしまいます。豊胸術では気が付いたら、胸が大きくなっていて、まったくわからない間に手術は終わります。
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 手術中も常に声を出して確認するのが掟(オキテ)です。
 外科医:『15番お願いします』
 看護師:『はい、15番です』
 外科医:『電メス(電気メスの略)のパワーを5に上げてください』
 看護師:『はい、5に上げました』
 局所麻酔で手術をする時には、あまり声を出さないようにすることもありますが、『はい』は常に声に出して言うようにします。
 ミスや事故を防ぐために、昔から手術室の掟(オキテ)として伝えられた決まりです。
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 手術中にもさまざまな掟があります。術者と器械出しの直接介助者は‘清潔’なので、手は胸より下に下げてはいけません。
 鼻の頭が痒くても、眼鏡がずれても、マスクがずれても自分では直せません。すべて、外回りと呼ばれる間接介助者にしてもらいます。
 手術中はトイレにも行けませんし鼻もかめません。風邪を引いて鼻水がズルズルの時は大変です。
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 このような手術室の掟は、医学部でも、看護学部でも、看護学校でもあまり教えなくなりました。国家試験にもあまり出題されません。
 私が北大病院の手術室へはじめて入った時、ベテランの看護師さんから、『先生、手洗いしていたら失敗しても頭をかいたらダメょ』と優しく教えていただきました。

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