医学講座
自己臭恐怖
自己臭恐怖という‘病気’があります。ワキガではないのに、自分はワキガじゃないか?と疑う人。口臭、おならの臭い、尿臭、場所不明の臭いなど、人によって症状はさまざまですが、自分の臭いを極度に気にする‘病気’です。
精神神経科では社会不安障害(Social Anxiety Disorder:SAD)という病気の概念で説明されます。北大精神科の先生から、この病気についての詳しい資料をいただきました。
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札幌美容形成外科を受診していただく方の中にも、臭いが全くしないのに、自分は『ワキガ』だと思い込んでいる方がいらっしゃいます。
‘本物のワキガ’と‘思い込みワキガ’を見分ける方法として、私が注意するのは服の色です。
‘本物’の方は、まず絶対に白いシャツを着ていらっしゃいません。ブラなどの下着も白は着用されません。
多いのは、グレーとか黒などのシャツや下着です。
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中には、毎日とても気をつけていらっしゃるので、来院時には臭いがない方もいらっしゃいます。
昔、北大形成外科の研修医だった頃、先輩から教えられた、ワキガの診察法は、ワキにガーゼをはさんでその臭いをかぐ方法でした。
診察室に入ってから、ガーゼをはさんでいただき、問診の後で臭いを確認します。
これで臭いがしなければ、ワキガではありませんと診断していました。
今から考えると、ずいぶんいい加減な診断法です。たまたま、病院に来る前にシャワーでも浴びていれば、臭いはしません。
美容外科でもこの方法をとっているクリニックがあります。
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私が現在とっている診察法は、まず患者様に鏡でワキを見ていただきます。
多汗が強い方は、見ている間にツブツブの汗が出てきます。この汗はワキガのアポクリン腺からもワキガと関係ないエクリン腺からも出ます。
その状態で、ワキに触ってみます。必要に応じて患者様にも触っていただきます。
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ワキガの方の汗はワキガでない方と比べて、ベトベトしています。おそらくアポクリン腺からの汗の粘度が高いのだと思います。
耳垢が湿っているかどうかも、重要なポイントです。極めてマレに耳垢が乾いていても、ワキガ臭がすることもありますが、通常、ワキガの方の耳垢は湿っています。
これで、‘思い込みワキガ’の方を間違って手術することはまずありません。
単なる多汗症でしたら、ワキガ手術までしないで、ボトックス注射をお薦めします。また手掌(てのひら)まで、汗だらけの人には、胸部交感神経の手術を薦めています。
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私がどう診断しても、ワキガの症状が無い方。手術をして臭いがなくなって、誰が嗅いでも臭いがないのに、他人が自分の臭いの事を話していて、学校や職場にも行けないという方がいらっしゃいます。
そういう方には、自己臭恐怖のことを説明して、北大病院の精神神経科をご紹介しています。
北大精神神経科は、昔から自己臭恐怖の研究をしておりご専門の先生がいらっしゃいます。最近、認可になったお薬がよく効くそうです。