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消毒と滅菌

 医学部や看護学校の講義のようですが、解説を続けます。消毒と滅菌は似ているようですが大きく違います。
 手術を終わった後で、「先生、キズはいつから濡らしてもよろしいですか?」「どのお薬で消毒すればよろしいでしょうか?」などとご質問を受けることがあります。
 札幌美容形成外科では、原則として手術後に消毒薬はお渡ししておりません。大部分の手術後にお渡しするのは抗生物質と消炎剤が入った軟膏です。
 唯一、消毒薬だけをお渡しするのがピアスです。米国製の医療用ピアスを使用していますが、そのマニュアルに消毒が記載されているためお渡ししています。ボディーピアスも同じです。ピアスという異物を体に装着するので消毒します。
 ワキガ手術、包茎手術、目の手術、鼻の手術のいずれの術後にもキズは消毒いたしません。傷はキレイに縫合してあるので、わざわざ消毒しなくてもバイ菌が入る可能性は低いのです。
 むしろ消毒薬で皮膚炎を起こすことの方が心配です。術後は抗生物質を内服し、抗生物質が入った軟膏を外用するだけで十分です。
 キズはシャワーなどで洗った方がキレイに治ります。重傷のヤケドでも、生理的食塩水と同じ濃度にした風呂で全身を洗います。こうするとヤケドがよく治ります。生理的食塩水はヤケドやキズにもしみません。ある種の温泉がヤケドに効くのはこうした理由です。
 消毒とは人体に有害なバイ菌を消すことです。ただ完全にゼロにはできません。減らす程度です。死なない菌もいます。ふつうのキズならこれで十分ですし、消毒は不要という先生もいます。私もキズは消毒しない派です。
 滅菌はすべての菌を殺してしまうことです。抹殺するのです。細菌もウイルスもカビも殺します。手術に使う器具は‘消毒’ではダメです。熱湯をかけるのも消毒です。滅菌は高圧をかけて温度も100℃以上に上げます。
 生身の人間はヤケドをしてしまうので滅菌はできません。手術をする前には術野を消毒します。皮膚をキズつけるので消毒をしないと有害な菌がキズに入る恐れがあるからです。
 感染が問題になるのは抗生物質や消毒薬が効かない菌がいるためです。医学が進歩して薬をたくさん使うようになったのでバイ菌も力をつけました。術後にトラブルを起こすのは大部分が耐性菌です。耐性菌については別の日に書きます。

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