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顔のケガと健康保険
日本IBM健保組合HPに‘けがの処置のための整形手術’は健康保険でかかれると記載があります。一見もっともなようですが、実は大きな問題があります。そもそも整形手術という項目が保険に収載されていません。
私たち保険医が保険診療をする際は、国が決めた方針に基づいて診療を行います。『医科点数表の解釈』という本が社会保険研究所というところから出されています。一般の方でも大きな本屋さんで購入できます。
この中に手術料という項目があります。皮膚・皮下組織や形成などの項目ごとに細分化されています。たとえばK219眼瞼下垂症手術 1眼瞼挙筋前転法7,200点というぐあいです。これは眼瞼下垂症手術を眼瞼挙筋前転法という手術法で行った場合、片目が\72,000ですよ。という意味です。盲腸の手術はK718虫垂切除術6,210点、\62,100です。盲腸の手術でしたら全身麻酔の料金や入院料、薬剤料がかかるため請求金額はもっと増えます。
法律でこの医科点数表にない手術は保険診療ができないことになっています。先ほどのけがの処置のための整形手術はありません。
唯一、それに近い手術がK010瘢痕拘縮形成術 1顔面9,740点です。ただ、これには注釈がついていて、単なる拘縮に止まらず運動制限があるものに限り算定する。と記載されています。簡単に言うと、目が引きつって閉じることができないとか、口が開けないという程度のキズでないとダメということです。
他人につけられてしまった、キズはたとえ軽微なものでも‘ちゃんと治してください’と言いますね。この軽微なキズは、そもそも健康保険で治すという前提がないために診療報酬点数表にありません。点数表にない手術は保険診療ができないのが原則です。
実際に診療していても困ります。特に自由診療ができない公立病院や国公立大学の附属病院で困ります。日本形成外科学会では、運動制限がない瘢痕は皮膚良性腫瘍摘出術で算定すると回答していますが、事故で腫瘍ができることは通常考えられないため医療現場では混乱します。早く関係法令を改正していただきたいと思います。