医療問題

天使病院理事長解任

 平成19年9月12日北海道新聞朝刊の記事です。
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 天使病院、西村理事長を解任 移管見直し 産科3医師は残留。
 妊娠後期から生後約一週間の「周産期医療」の拠点となっている天使病院(札幌市東区)の産婦人科医6人全員が退職を決めた問題で、同病院を経営する医療法人社団カレスアライアンス(室蘭)は9月11日、臨時の社員総会と理事会を札幌市内で開き、西村昭男理事長を解任し、新理事長に、同法人が経営する日鋼記念病院(室蘭)の勝木良雄・前院長を選んだ。西村氏が主導し、産婦人科医が退職理由に挙げていた天使病院の経営移管は再検討する方針で、6人のうち3人は勤務を続ける。
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 西村氏が天使病院の移管先としていたのは、西村氏が別に理事長を務める特定医療法人社団カレスサッポロ(札幌)。カレスアライアンスの一部理事は「産婦人科医全員が退職すれば、道央の周産期医療が崩壊する」などとして、理事長退任と移管撤回を求めていた。
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 社員総会では理事の1人が西村氏の理事解任動議を提出。賛成14、反対5、棄権2で解任された。10月に予定していた移管については再検討することを理事会で決めた。
 新理事長の勝木氏は2月に日鋼病院を退任したばかり。天使病院の院長も杉原平樹(つねき)氏から、カレスアライアンスの辻崎正幸理事に交代した。辻崎新院長は「移管の再検討は撤回に向けたもの」と説明している。
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 西村氏は1978年に日本製鋼所病院(現日鋼記念病院)院長に就任後、家庭医の育成や道内初の緩和ケア病棟の開設に乗りだし、道内地域医療の先駆者として注目を集めた。近年は病院の不動産を原資にした債券の発行や医療ビル建設を計画し経営拡大を図っていた。
 同氏は天使病院の移管について「札幌の病院はカレスサッポロに集約するため」と説明したが、カレスサッポロはそうした経営拡大の足場になっており、同病院の産婦人科医は「医療費抑制の時代に、破綻(はたん)は目に見えており、リスクの高い周産期医療は続けられない」と反旗を翻した。
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 西村氏は理事会後、記者会見し、「解任はクーデターで複雑怪奇。産婦人科医は現状に固執しただけ」と、2時間にわたり、産婦人科医や解任を決めた理事を批判した。カレスサッポロの理事長は引き続き務める。
 勤務継続を決めた天使病院産婦人科の吉田博科長は「道内の周産期医療が混乱しないよう、(早産や低体重児など)リスクの高い出産を受け入れる態勢をつくり直したい」と話している。
 一方、日鋼記念病院では、西村氏に近い医師2人が退職届を出した。勝木新理事長は「退職届を出した医師を説得し、地域医療の混乱を避けたい」としている。
 (平成19年9月12日北海道新聞朝刊より引用)
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 とうとう西村先生が解任されました。
 日鋼記念病院から産婦人科医がいなくなり、天使病院からも産婦人科医がいなくなる。
 これは尋常なできごとではありません。以前の医療法で、総合病院の規定がありました。最低限、内科、外科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科の5つの科がなければ、総合病院とは言えませんでした。
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 天使大学には、助産学専攻の大学院が設置されています。全国的にも助産学の大学院は珍しいのですが、大学と同じ名前の‘天使病院’から産婦人科医がいなくなっては、助産学の大学院もどこで研究するのでしょうか?
 カレスの西村理事長解任はこれからの医療業界を象徴したできごとだと思います。
 西村理事長は、北海道新聞社の報道にあるように、病院の不動産を元にファンドからお金を調達して経営を拡大してきました。
 一見すごいことに見えますが、‘医療はもうかる時代’は終わっています。
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 効率的な経営を求められると、医師の待遇はどんどん悪くなります。
 日鋼記念病院の研修医が『僕の給料は師長さんよりずっと低いんです』と嘆いていたのを覚えています。
 医療コンサルタントの方に伺うと、これから倒産する病院がどんどん出てくるそうです。
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 西村先生には、北大形成外科が大変お世話になり、毎年北大形成外科の忘年会にもいらしていただいていました。
 個人的には、西村先生がお気の毒だと思いますが、天使病院から産婦人科の灯が消えなくてよかったと安堵しています。
 医療経営はこれからますます厳しくなります。札幌美容形成外科の理事長は私です。医師一人で理事の医師も私一人です。
 解任されたり、倒産しないように頑張りたいと思っています。

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