医学講座
商業主義が生んだヒアル顔
今日は2022年6月27日(月)です。
第144回日本美容外科学会学術集会(東京)②の続きです。
顔が不自然に膨らんだ方がいます。
医学用語ではありませんが、
ヒアル顔と呼ばれています。
医学的には、
マレーシアのTingsong Lim先生がつけた、
over filled syndrome ヒアルロン酸入れ過ぎ症候群という名前があります。
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私は2018年4月からヒアルロン酸を中止しました。
上手に注入するといい方法ですが、
ヒアルロン酸による血管閉塞のリスクがあります。
実は、
私もover filled syndrome ヒアルロン酸入れ過ぎ症候群や、
ヒアル顔を心配していた一人です。
ヒアルロン酸を中止したもう一つの理由です。
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私は北大形成外科でチーフレジデントをしていた時、
大浦武彦教授からコラーゲン臨床試験の担当を命じられました。
北大形成外科では、
それより前から国産コラーゲンの臨床試験をしていました。
私が担当を命じられたのは、
米国のベンチャー企業が開発したウシコラーゲンでした。
臨床試験の総括責任者が大浦武彦教授で、
試験に参加した施設が東大・京大・北大の全国の3大学でした。
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北大の担当者が私。
東大の担当者は征矢野進一そやのしんいち先生で、
京大の担当者が平本道昭先生でした。
征矢野先生は後に神田美容形成外科を開業され、
名実ともに注入治療の第一人者になられました。
平凡な形成外科医だった私が、
美容外科と最初に出会ったのがコラーゲンでした。
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昔のコラーゲンやヒアルロン酸は、
浅いところに注入してシワを目立たなくしていました。
コラーゲンは吸収されるので、
コラーゲン顔にはなりません。
たまにアレルギー反応が出るくらいです。
ヒアルロン酸の注入方法が変わってきて、
深いところに大量に注入する手技が流行りだしました。
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ヒアルロン酸もいろいろなメーカーから、
多種多様な製品が出てきました。
ヒアルロン酸には有効期限があります。
まとめて50本とか100本を購入すると割引があります。
メーカーはたくさん売りたいので、
たくさん購入すると割引率が高くなります。
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大量に購入すると、
使用期限内に使い切る必要があります。
メーカーの商業主義による販売戦略です。
クリニック側も、
ヒアルロン酸の売上は大きいので、
他院よりもちょっとでも安く売ります。
一本当たりの単価を下げて、
一人に大量に注入するようになります。
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一部の美容クリニックが、
いけいけどんどんで大量に注入すると、
ヒアル顔の方が増えます。
自分ではすぐに気づかなものです。
はっと気が付くとパンパンのヒアル顔の完成です。
私がヒアルロン酸注射をやめた理由のもう一つの理由です。
ヒアルロン酸を入れないと不安になる、
患者さんがいらっしゃいます。
それが
ヒアルロン酸入れ過ぎ症候群と呼ばれる理由です。