医学講座
眼瞼下垂症と保険適応
眼瞼下垂症は‘病気’なので保険適応になります。と昨日記載しました。どの程度の眼瞼下垂なら保険適応になるのでしょうか?というお問い合わせをいただきました。
どの程度だったら保険適応になるか?という厳密な規定は現在のところございません。保険医の判断に委ねられているのが現状です。ただ、保険医も監査や審査を受けますので、いい加減な診療をしていると保険医を取り消されます。
陥没乳頭手術は注釈に‘授乳障害のある陥没乳頭に対して乳頭形成を行った場合に算定する(保険の対象になる)’と規定があります。ところが眼瞼下垂症には注釈がありません。
保険適応になるかならないかは国が決めた決まりがあります。健康保険で治療を受けられる病気やけがとは、保険医が診療の必要を認める状態をいいます。ですから、単なる疲労とか、美容整形、正常なお産、健康診断などは、健康保険では診療できません。ただ誤解も多く、知らないと損をします。こちらのIBM健保組合HPの記載も誤っています。ワキガ、小耳症、四肢(指趾)の先天異常はいずれも保険適応になります。
札幌美容形成外科を開業して間もない頃でした。あるご婦人が眼瞼下垂症手術を希望なさって来院されました。そのご婦人は片眼が義眼でした。両眼とも眼瞼下垂症があり、見えるほうの目で見ても瞼が下がって明らかに見にくそうでした。そのご婦人は、以前別の病院で眼瞼下垂症手術を受けたことがおありでした。
私は大変申し訳ありませんが、義眼の目は保険適応になりません。と申し上げました。眼瞼下垂を手術して治しても視力が改善して見えるようにはならないからです。
その方は、以前別の病院で手術を受けた時には、義眼の目も保険で眼瞼下垂症の手術を受けられたので聞いて欲しいといわれました。私は北海道社会保険事務局に内議(問い合わせ)をしました。担当の先生は、眼瞼下垂症で肩こりや頭痛などの症状があり、社会通念上、手術が必要と認められれば、保険適応にして構わないと回答してくださいました。保険の審査でも特に問題はありませんでした。
私は、眼瞼下垂症の手術適応は、①アゴを上げてモノを見ている。②正面を見た時に、瞳孔が睫毛や瞼で隠れて視野が狭くなっている。③肩こりや頭痛など眼瞼下垂による症状がある。などを総合的に判断して保険適応を決めています。
保険適応の判断は都道府県によっても異なります。一般的に大学病院や総合病院の形成外科は保険適応にしてくれると思います。日本形成外科学HPなどでお近くの認定施設を探して相談なさってください。