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病棟見学

 私が北海道大学医学部形成外科に在籍していた当時は、唇裂(シンレツ)や口蓋裂(コウガイレツ)の患者様がいらっしゃると、形成外科病棟を見学していただいていました。記憶は定かでありませんが、病棟の看護師さん(当時は看護婦さん)が院内研究で発表したスライドを使い、お母さんに説明をしてくれていました。
 手術前には手術後のキズを保護するために、スポイト式哺乳瓶でミルクを飲む練習をします。手術一週間前に入院して練習を開始します。母乳で育てている赤ちゃんもスポイト式乳首になります。お母さんのおっぱいが人工的な乳首になるので、赤ちゃんの機嫌は悪くなり哺乳量も減ります。また、術後に指しゃぶりなどをしないように、抑制帯という腕にはめる筒を製作していただき、それもつけます。
 病棟の看護師さんは忙しい業務の間に、外来からの患者様を案内して、必要物品や抑制帯の作製方法を説明してくださっていました。北大形成外科には、常時6人程度の唇裂や口蓋裂の赤ちゃんがおかあさんと一緒に入院していました。
 病棟見学へ行くと、看護師さんの説明の他に、この手術後の赤ちゃんや手術前の赤ちゃんに会うことができました。今なら個人情報保護などで難しいのかもしれませんが、どんなに私が口頭や図で説明するより、病棟で他のお母さんから『大丈夫よ。ウチも同じだったのよ』と言われ、実際に手術後の赤ちゃんを見ることが、お母さんの安心につながっていました。私が手術を担当させていただいた患者様同士が仲良くなり、ずっと交流を持っていらっしゃる家族もあります。
 美容外科ではなかなか体験談を直接聞くことはできません。私が患者様にお願いして、このHPでビデオや画像を使わせていただいているのは、この北大病院の病棟見学で得られた経験に基づいています。医師がどんなに説明するよりも、体験者の一言の方がよほど説得力があります。

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