医学講座

妊娠授乳中の手術③

 陥没乳頭手術は授乳障害がある方のみ保険適応になります。厚生労働省が決めた規則です。妊娠・出産して、いざおっぱいをあげる段階になって、はじめて陥没乳頭に気づくこともあります。赤ちゃんは何も教えていないのに、お母さんの乳首を見つけて吸い付きます。赤ちゃんが吸い付いた刺激で、脳下垂体という組織からホルモンが出て乳汁分泌がはじまります。
 ところが乳首が出てこない陥没乳頭には赤ちゃんが吸い付けません。したがっておっぱいも出なくなります。助産婦さんの指導で、吸引したりマッサージをして出る方もいらっしゃいますが、重度の陥没乳頭では無理です。
 陥没した乳首には、分泌物がたまりやすく、お風呂で洗ってもなかなかキレイになりません。陥没した部分にバイ菌が感染すると膿が出てきます。黄色ブドウ球菌などが感染すると、毒素を出しますので、赤ちゃんが口にすると食中毒になることも考えられます。
 感染した場合には、切開排膿という処置が必要になることもあります。この時点で陥没乳頭の手術をしてくださいと依頼されても、絶対にできません。授乳障害がある陥没乳頭には健康保険が適応になりますが、現在、授乳中である陥没乳頭は手術ができないのです。
 その理由は、授乳中の乳首はとても肥大していて、乳汁分泌もあります。そこを切ると乳汁があふれてきます。感染した乳首を手術すると、膿が出てきて感染が悪化する可能性があります。応急処置で膿を出すことは、外科医の常識ですが、感染病巣に根治手術をすることは考えられません。
 軽度の陥没乳頭は吸引して刺激を加えていると出るようになります。ピジョンという会社から乳頭吸引器も販売されています。実際に使用して改善したというも掲載されています。高校生でも悩んでいる方は試してみてください。お姉さんに頼まれたと言えば買うのも恥ずかしくありません。札幌駅前のBIGカメラにある赤ちゃん本舗でも売っています。
 これを試してもダメな方は妊娠する前に手術で治してください。手術をしても乳首を圧迫すると再陥没します。乳首には骨がないので、うつぶせ寝などで圧迫するとつぶれます。うつぶせ寝の方は特に注意なさってください。札幌美容形成外科では専用プロテクターで術後3ヵ月は保護していただいています。

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