医学講座
目頭切開
最近、目頭切開の手術が増えています。私が最も得意とする手術の一つで、好きな手術です。目頭の皮膚がひだのようにかぶさって、目頭の赤い部分(涙湖といいます)が見えないのです。アジア人に多いので蒙古ひだと呼ばれています。ここをチョンと切るのが目頭切開です。目が大きく見えるようになります。
私が行っている目頭切開は顕微鏡下(ケンビキョウカ)内眼角靭帯短縮法(ナイガンカクジンタイタンシュクホウ)。舌を噛みそうな長ったらしい名前です。切断された指をつなぐのに使う手術用顕微鏡を使い、わずか2~3㎜程度の小さな範囲を細かく切って縫うのです。その時、目を骨に固定している内眼角靭帯というスジを引っ張るのでキズがキレイに治ります。
はじめて、この術式を見たのは今から10年以上前でした。東京の吉祥寺で行われた、日本美容外科学会でセブンベルクリニックの渡部純至(ワタナベキヨタカ)先生が発表されました。それまで見た目頭切開とは違い、なんてキレイなんだろうと感心しました。興味を持ったはじまりです。
その後、2002年7月に米国形成外科学会雑誌(PRS)に発表された、韓国テグ市の形成外科医、Cho先生の論文を読んで、この方法で手術をはじめました。Medial Epicanthoplasty Combined with Plication of the Medial Canthal Tendon in Asian Eyelids という題です。渡部先生もCho先生もすばらしい手術をなさっていますが、お二人とも顕微鏡は使っていません。手術用顕微鏡を使うのは形成外科医の中でも、再建外科という領域で細い血管を扱っていた医師です。指の血管くらい細いものを扱っているのですから、目頭の2㎜や3㎜はお手のものです。実に細かくよく見えます。
手術用顕微鏡を使うことにより、手術のキズがキレイに治ります。また、手術後の腫れや赤味がずっと少なくなります。数日、少しキツネ目になりますが、抜糸の頃には落ち着いてきます。
日韓形成外科学会という、日本と韓国の形成外科医が合同で行う学会があります。私はこの学会でCho先生とお会いし、手術のお話しをしました。今から3年前だったでしょうか?Cho先生も私の顕微鏡下手術には賛成してくださいました。Cho先生は自分の開発した手術が日本で役立っていて嬉しく、私は自分が改良した方法が韓国の先生に認められて嬉しく思いました。医者同士の交流はこうして学会を通して生まれます。