昔の記憶

劔物 修(けんもつおさむ)先生の想い出

 私が劔物先生とご一緒だったのは、
 劔物先生が東邦大学から北大へ赴任された直後でした。
 毎週金曜日に、
 北大病院の中央手術部で、
 手術場会議(しゅじゅつばかいぎ)がありました。
 各科が…
 翌週の手術予定を持ち寄って、
 調整する会議です。
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 麻酔科研修の想い出④に書きました。
 手術室看護師の数や、
 麻酔科医の数には限りがあります。
 全ての科の手術や麻酔を引き受ける、
 人的な余裕がありませんでした。
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 今はどうかわかりませんが、
 看護師さんの数が足りないので…
 直接介助は無しでお願いします。
 【2名の看護師がつくところを1名にしてください】
 とか
 この手術は次週にまわしてください。
 という調整の会議でした。
 この会議に出るのが、
 形成外科ではチーフレジデントでした。
 私も半年間出席しました。
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 劔物先生は、
 札幌医大卒業生として、
 はじめて北大医学部の臨床系教授に就任されました。
 私たち札幌医大の卒業生としては、
 とても名誉なことでした。
 しかし…
 劔物先生が赴任されてからは大変でした。
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 麻酔科医の数は少なく、
 依頼されたすべての手術の麻酔を、
 安全にかけるのは大変なことです。
 ある日の手術場会議で…
 麻酔科医局長だった佐々木先生が、
 申し訳ございませんが…
 この手術は無理…と言いかけたところ…
 新任の劔物教授が、
 その麻酔は私がかけますから
 引き受けてください
 と言われたのを…
 今でもはっきり覚えています。
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 劔物先生は、
 手術場では厳しい先生でした。
 優秀な麻酔科の先輩ですら、
 『劔物先生からがっつり怒られた』
 …と伺ったことがありました。
 眼鏡の奥に鋭い目がありました。
 その鋭い目のさらに奥には…
 とても優しい目がありました。
 3月28日が命日です。
 心からご冥福をお祈りしています。
 【訂正】
 今まで札幌医大同窓会名簿と北大医学部の記載を見て、けんもつ先生を劒物と表記していましたが、物の誤りでした。
 先生ごめんなさい。

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