院長の休日

北海道発、女たちの覚悟 桜木紫乃

 今日は2020年6月14日(日)です。
 昨日の北海道新聞朝刊、サタデーどうしんに、
 とてもいい記事が掲載されていました。
 ぜひご紹介したいと思い引用しました。
 サタデーどうしんは、
 北海道新聞の紙面に掲載されています。
 北海道新聞電子版にはないようです。
 電子版から紙面を見るを選ぶと読むことができます。
 北海道新聞を定期購読していると、
 追加料金なしに読めます

 おすすめします。
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 サタデーどうしん
 北海道発、女たちの覚悟 桜木紫乃
 世の中が変わる それでも
 ここ数カ月で世の中がぐるりと変化した。目に見えないものが怖いのは、幼いころひとりで入った夜中のトイレ以来だ。
 いつもは原稿書きに使っているモニター画面に、担当編集者とライターさんと私が映り込んでのインタビュー取材。こんな日が来るとは思わなかった。恥ずかしながら、機械音痴である。便利なはずの機械を使う前にアタマを使わねばならぬとは、不覚。
 「こんにちは。今日はインタビューよろしくお願いします」
 そう言った若き女性担当者の後ろを、年長さんの息子が走り抜けてゆく。
 -ちょっと、ウルトラマンで遊んでてって言ったでしょう。ママお仕事なんだよ。
 やんわりと息子をたしなめる彼女は、文芸編集者のなかでも業界三本指と言われる才媛だが、家では幼い息子ふたりのママなのだった。保育園の先生やお友だちと会えない息子たち、著者と会えない編集者、私たちを待っている馴染みのお店-世の中に溢れかえる「会えない」は、思いのほか長かった。同時に「不要不急」という言葉が溢れて、どれが要でなにが急なのか、改めて考えなければいけなくなった。
 インタビューが始まって間もなく、下の息子がドアの陰からちょろりと画面に登場し「ママ、うんこ」。これは要で急だろう。
 若い女の子が大好きな筆者の周りには、美しい(当社比)女性編集者が集まっている。待ち合わせたホテルロビーや、社屋の会議室、取材や打ち合わせに現れる彼女たちは常にバリっと洗練されたファッションで、弱音を吐かず静かにミッションを遂行してきた。
 このたび結婚いたしましたー
 春から産休に入りますので、お原稿を少し早めにいただけると助かります-
 可愛い声と表情で何回凄まれたことか。ナチュラルメイクのその向こうに「生活」があることを想像させない仕事人たちだ。その彼女たちの生活も、春から一変した。出社もないし退社もないが、律義に三食ご飯を作り、おむつやパンツのお世話をし、会社にいるときと同じ量の仕事を抱える。これもいいかも、と思えるのは何日目までだろう。育ち盛り、生意気盛り、反抗期の子供たちを相手にしつつ在宅勤務する担当者から来るメールは、ちょっと元気がない。
 筆者はもともと家で仕事をするので、それ自体は変化がないのだが、外に「出ない」ことと「出られない」ことの大きな違いに気づいた日、途端に胸苦しくなった。時間があるからといって進む仕事でもないらしい。
 子供たちのトイレタイムを挟みながら、インタビューは無事終了した。画面の中で深々と頭を下げた彼女は、今まで見たこともない疲れ切った表情だ。お疲れさまでした、とあっさり言っていいものかどうか。
 後日、電話でやりとりをした際に彼女が言った。
 「この先、仕事のやり方が変わってゆくだろうという明らかな感触があります」
 それが子育て中の彼女たちにとって良いものであるよう、ひたすら祈る。仕事のかたちが変われば、家族のかたちも変化するだろう。
 生活も仕事も、家族も、男も女も年寄りも子供も、時代の急な舵切りに戸惑うばかりだ。けれど今回も、しつこいようだが文末に「しぶとく生きていこう」と書いて締めます。
       ◇
 桜木紫乃さんのエッセーは隔月で掲載します。

(以上、北海道新聞より引用)

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 在宅ワークも大変です。
 子供さんが家にいると、
 仕事にならないと想像します。
 ふだんは保育園に行っている子供さんにとって、
 大好きなママが毎日家にいるのだから、
 うんこが出なくても、
 『ママ、うんこ』と言いたくなる、
 子供さんの気持ちもわかります。
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 私は桜木紫乃さんの文章が大好きです。
 北海道の直木賞作家です
 火付けと泥棒だけはするな
 …というお父様の言葉も印象的でよく覚えています。
 桜木紫乃さんが言われるように、
 しぶとく生きていこうじゃありませんか。
 いい記事を掲載してくださった、
 北海道新聞社に感謝しています。
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