医療問題
自治体病院再編
平成19年8月19日(日)の北海道新聞に北海道の自治体病院についての記事が載っていました。
自治体病院とは市町村が経営する病院のことです。
北海道内の94ヶ所の市町村病院と7つの道立病院を合わせた累積赤字は、2005年度で計1,800億円です。
北海道庁を筆頭にどこの自治体も財政難のため、一般会計からの繰入金には限度があります。
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公務員は倒産する心配がなく、退職金もたくさんもらえるというのは過去の話です。
昨年は道職員の給与が10%削減されました。赤字再建団体になった夕張市では職員の待遇が悪くなり、救急隊員が辞職しているというニュースが流れています。
退職金を払えないので、定年を延長して退職金代わりにする構想もあるようです。
財政難の地方自治体では、病院経営ができなくなっています。
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病院に入るお金は、患者様からいただく自己負担金と保険者から支払われるお金で決まります。
このお金の額は、厚生労働省が決める、診療報酬という価格表で左右されます。この価格を毎年下げられているので、自治体病院の経営も民間病院の経営も苦しくなっています。
同じ内容の治療をしても、病院に入る収入が毎年少なくなるのです。職員の給与は下げることはできません。
辞める医師や看護師が増えると、残された人に負担がかかります。給料は増えないは、仕事は増えるは、では辞めたくなって当たり前です。
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病院の経営が難しくなった市町村は、近隣の市町村に患者様を‘回す’ことになります。
北海道の構想では、道内を数十の区域に分け、各区域ごとに200床以上の規模で高度な医療や手術を行う中核病院を設置。その他の病院は、初期診療を担う診療所などに役割分担するというものです。
中核病院としては、根室管内の中標津町立病院などがあります。近隣の羅臼町立病院は累積赤字が9億円になり、診療所に格下げしました。
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一見、合理的な政策に見えますが、羅臼から中標津までは約65㎞もあります。
車を持っている若者でも、簡単に行ける距離ではありません。
病気や体が不自由なお年寄りに、羅臼から中標津まで通いなさいというのは無理だと思います。
医療制度は、国民が健康で文化的な生活を営む上でとても大切なものです。憲法で保障された国民の権利です。
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老人が増えて医療費が増大したから、医療費を削減する。医療費を削減するには、診療報酬を下げる。
診療報酬を下げると、病院経営は成り立たなくなり、地方の医療機関から切り捨てられる。という悪循環です。
私は、若い先生が‘夢とロマン’を持って働けるような医療制度改革をしないと、決して医師不足も僻地医療も改善しないと思います。