医学講座

車の運転と手術

 昨日の更新時講習で、
 交通事故は…
 注意力散漫(さんまん)が原因と
 教えていただきました。
 手術はどうでしょうか?
 手術中に、
 注意力散漫で…
 医療事故が起こるとお考えですか?
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 医療事故の種類にもよりますが、
 医師に関して言えば、
 手術中の事故の原因は経験不足で起きます。
 手術中は常に注意力散漫にしています。
 術者(じゅつしゃ)は手術中に、
 術野(じゅつや)を常に見ています。
 切開をして、
 剥離(はくり)をして、
 血を止めて(止血)…
 などの操作の間は、
 常に術野を注視しています。
 原則として目を離しません。
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 ここは車の運転で…
 常に前を見るのと同じです。
 ところが…
 耳からは常に別の情報をキャッチしています。
 一番注意するのは、
 モニターの音です。
 麻酔科の先生に麻酔をお願いしている時でも、
 術者はモニターの音を聞いています。
 ピッ…ピッ…ピッ…
 という音が規則正しく聞こえていれば、
 安心できます。
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 私のように局所麻酔で手術をしていると…
 患者さんの反応を気にしながら手術をしています。
 痛がっていないか?
 腰や首は辛くないか?
 痒いところはないか?
 時々大丈夫ですか?
 声をかけながら手術をします。
 その間も目は顕微鏡を見たままです。
 たまに局所麻酔の患者さんが、
 手術中に眠ってしまうこともあります。
 痛みがなくて、
 緊張がほぐれると眠ることがあります。
 その時は寝息を聞いています。
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 手術は車の運転とは違います。
 定期航空路を操縦するようなものです。
 ベテランのパイロットは、
 さまざまな気象条件に対応して、
 旅客機を安全に飛ばしてくれます。
 どこでどんな雲がよくでるか…?
 どこの空港で、何に気をつけるべきか?
 を熟知しているのがベテランパイロットです。
 急な変化にも対応できます。
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 ベテランの外科医は、
 どこで出血しやすいか?
 次は何に気をつけて手術をすれば良いか?
 を熟知しています。
 手術の後には何に気をつけるべきか?
 までを完璧に理解しています。
 私のように眼瞼下垂症手術など、
 同じ手術を数千例もすると、
 定期航空路がよく見えるようになります。
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 航空機も100%安全とは言えません。
 でも、
 よく整備された機体で、
 ベテランパイロットが操縦すると…
 安全性が高まります。
 手術も同じです。
 経験豊かな外科医が、
 細心の注意を払って行う手術は、
 安全性も快適性も高まります。
 患者さんは、
 いかに安全で快適な航空会社を選ぶかが、
 大切なポイントとなります。

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