医学講座
糸の種類
さくらんぼさんから、
繭(まゆ)と蚕(かいこ)についての、
コメントをいただきました。
手術で使う糸に関しては、
2008年8月7日の日記に
釣り糸と二重手術という題で書いてあります。
昔は、
外科手術に使う糸が、
絹糸(けんし)でした。
■ ■
抜糸が痛いというのは…
おそらく絹糸の時代のことです。
中学校時代に、
同級生が盲腸(正確には急性虫垂炎)で、
入院して手術をしました。
盲腸になったら…
病院に入院して手術。
看護婦さんに毛を剃られて…
恥ずかしかった…
とか、武勇伝のように話しました。
■ ■
手術は麻酔をして…
痛くなかったけど…
抜糸がなまら痛かったべゃ~
なんて…
北海道の言葉で話した記憶があります。
北海道の言葉には、
よくこのべゃ~が登場します。
盲腸になったら恥ずかしいし、
抜糸も痛いので、
どうしよう…?
と思ったものです。
■ ■
昔、外科手術に使った絹糸は、
今よりずっと太い糸でした。
絹糸は細い糸を撚(よ)って、
一本の糸にしています。
絹糸は今でも使われていますが、
より異物反応が少ない糸が、
キズをキレイに治してくれます。
形成外科で最も一般的なのは
ナイロン糸(し)です。
■ ■
ナイロン糸をはじめて使ったのが、
釣り糸の二重手術だったのか?
形成外科の手術だったのか…?
その辺のところはわかりません。
私は形成外科の手術に使われたのが古く、
二重手術はその後だと思います。
釣り糸のように透明なナイロン糸は、
実際には使いにくいので…
大部分のナイロン糸は…
黒く着色してあります。
■ ■
ナイロン糸や絹糸には、
太さの規格があります。
ナイロン糸は…
2-0(にいぜろ)
3-0(さんぜろ)
4-0(よんぜろ)
5-0(ごーぜろ)
6-0(ろくぜろ)
7-0(ななぜろ)
8-0(はちぜろ)
9-0(きゅうぜろ)
10-0(じゅうぜろ)
11-0(じゅういちぜろ)
■ ■
数字が増えるほど細くなります。
8-0(はちぜろ)より細い糸は、
手術用顕微鏡で使います。
USP規格という国際規格では、
8-0(はちぜろ)のナイロン糸は、
0.04㎜。
7-0(ななぜろ)のナイロン糸は、
0.05㎜となっています。
形成外科で使う糸は、
このように細く、
異物反応が少ないので、
抜糸もあまり痛くないのです。