医学講座
わきが手術と汗
昨日の日記にわきが手術のことを記載しました。欧米では臭いのために手術を受ける方はマレですが、多汗症の手術は教科書にも記載されています。いわゆるワキガ手術をすると汗も減りますが、ゼロにはなりません。これは次のような理由によります。
汗の原因になるエクリン腺は皮膚の浅い層にあるため、アポクリン腺よりも取り除くことは難しいのです。欧米の教科書にも文献にも、わきが手術をすると多汗症が改善すると記載されていますが、ゼロになるとは書いていません。
わきが手術をして半年くらいの間は汗は劇的に減ります。ところが、術後3ヵ月程度経過すると神経が再生してくるため、少しずつ汗が出るようになります。これはどんな手術法でしても同じです。唯一異なるのがワキの皮膚をすべて切り取ってしまう手術ですが、大きなキズが残るためこの手術を行う美容外科医はいません。
この神経の‘再生’による発汗を‘再発’と勘違いして治っていないと言う方がいらっしゃいます。以前、診察した方は、手術を受けたのに『緊張すると服に汗染みができます!』といらっしゃいました。診察するとワキからは汗は出ておらず、汗染みは肩から出た汗がワキに流れてできていました。
私だって、緊張したり興奮するとワキに汗がたまり、胸の横をツゥ~っと汗がしたたり落ちます。これは生理的な現象で‘病気’でも‘異常’でもありません。
確かに、汗の臭いが気になることもあります。通常は汗をかいたら、下着を取り替えるとか、シャワーを浴びて対処します。一日に3枚も4枚もシャツを取り替える必要があって仕事に差し支えるような方は‘病的’な発汗の可能性があります。
汗を止めるのに、効果的な治療法はボトックスの注射や交感神経の手術です。性格的に緊張しやすい方には、一部のメンタルクリニックで行っている、‘自律神経訓練’があります。交感神経の過緊張を止めるために、自律神経の訓練を行います。効果は速効性ではありません。
わきが手術も汗を止める治療も簡単ではありせん。自分の症状と、何がどう困っているかを整理して相談にいらして下さい。