医学講座

皮膚色の違い

 ブラックジャックは黒人の子供の皮膚を移植してもらったので、顔の色が違っていました。これはマンガの世界の話です。皮膚だけ移植しても、他人の皮膚は生着しないというのが現在の医学常識です。国家試験で問題が出てもこの通りです。
 フランス中国で行われた顔面移植は、マイクロサージャリーという顕微鏡を使った移植技術の進歩で成功しました。脳死になった人から、顔面の皮膚だけではなく筋肉や軟骨も移植したようです。
 顕微鏡を使って血管吻合をすると、他人の顔面も技術的には移植できます。ただ一生免疫抑制剤という薬を飲み続けなくてはいけません。
 臓器移植法の制限があるため、日本では顔面移植は行うことができません。日本で行うことができるのは、心停止後の皮膚移植だけです。スキンバンクから重症のヤケドの人に移植することだけが合法です。
 ブラックジャックは黒人の子供の皮膚を移植してもらいましたが、現実には不可能です。自分の皮膚しか移植できません。
 自分の皮膚でも部位によって色が違います。よくお尻の皮膚を使って移植するという話しを耳にします。息子も『指にはお尻から移植した』と思っていたそうです。
 お尻から皮膚を採ることもありますが、通常は選択しません。一番多いのは大腿部(太もも)の外側です。皮膚が比較的厚く採取しやすいのと、採取後の管理がしやすいので選ばれます。お尻は、意外と目立つ場所で、採取後も軟膏ガーゼなどがずれやすく、座った時に当たって痛いなどの理由で第一選択にはしません。
 太ももから採った皮膚も鼠径部から採った皮膚も、指に移植すると色の違いが目立ちます。指と同じ色の皮膚は足の裏です。土踏まずから指に皮膚を移植するとまったくわからない位になります。ただ、成長とともに縮むことがあります。そのため、赤ちゃんの指に移植する時は鼠径部の皮膚を選ぶことが多くなります。
 形成外科医にとって一番の悩みは、大きくなった時に指の皮膚が黒くなることです。ブラックジャックの顔のように移植した皮膚が目立ちます。自分の皮膚なのに黒人の子供の皮膚を移植したようになることもあります。

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