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整形外科の大先輩
市立札幌病院で形成外科をなんとか‘宣伝’しようと考えていた頃です。整形外科の大先輩から言われました。
『先生、焦るんでない!』
『俺たちだって最初は外科の片隅でやっていたんだ』
『骨が折れたら骨接ぎに行ってた時代さ』
『整形外科って言ったらさ、美容整形ですか?って言われたもんだよ』
『最初は肩身が狭かったよ』
『ギプスの石膏で汚くなるって言われてね』
『でもね、整形外科で骨折を治すと、外科とはまったく違うってことがわかると、患者さんはどんどん来てくれましたよ』
『形成外科は、すばらしい技術があるんだから、これから必ず発展しますよ』
その大先輩をはじめとして、整形外科の先生からはたくさんの患者様を紹介していただきました。整形外科の先生とは何度も一緒に手術をしました。
『いやぁ~先生(私のこと)に来てもらってよかったよ』
『俺たちだけだったら、アンプタ(切断)しかなかった』
子供の下肢の重症の外傷です。骨はバラバラ、皮膚はベロンベロンです。整形外科の先生が骨を治して、私が皮膚と軟部組織を再建しました。深夜や朝までかかって、救急部や整形外科と一緒によく手術をしました。手術した患者様の中には、今でも年賀状をくださる方や結婚式に招待してくださった方もいらっしゃいました。
市立札幌病院では、外科系のすべての先生からとてもよくしていただきました。私の医師として青春時代です。毎日充実していました。器械や設備は予算の関係で揃っていませんでしたが、借りたり他の病院へ行ったりして手術をしていました。
今の若い先生は、形成外科に患者様が来るのが当たり前。他科の先生が紹介してくださるのが当たり前。形成外科医は‘楽して儲かりそう’だから形成外科を選ぶ、なんて思っている先生や学生さんがいるかも知れません。
私の時代は、北大の医局で、先輩でも‘○○さん’とか同期なら‘○○ちゃん’と呼び合って仲良く生活していました。ちなみに私は‘ホンマちゃん’と呼ばれていました。形成外科という新しい科をみんなで発展させようとしていました。
今は開業して、毎日一人で手術をしていますが、私が一人前になれたのは、たくさんの先輩から励まされ、教えていただいたおかげです。私が死ぬ前までに、私の技術や考えを後輩に伝承したいと思っています。