昔の記憶

奨学金破産② 息子の死から8年、督促状

 平成30年2月16日、朝日新聞朝刊の記事です。
 奨学金破産の連載最後です。
 奨学金破産② 息子の死から8年、督促状
 保証人追いかけ、延滞金も
 手元にはA4封筒の束がある。中には奨学金の貸与が決まったことを告げる、日本学生支援機構からの通知。埼玉県立蕨(わらび)高校の仲野研(けん)教諭(59)は高3の生徒たちに配り、呼びかけた。
 「開ける前に、自分が月々、いくら借りることになるのか封筒の端に書いてごらん」
 正しく書ける生徒は約100人のうち7割ほど。「じゃあ、大学を卒業したら、どれぐらいの金額になる?」「毎月、いくらずつ返す?」。ペンをもつ生徒たちの手が止まった。
 仲野教諭らが担う「奨学金」事務は、申請書類を集めて機構に送るなど、手続きを支えるのが役割だ。作業は単純だが、数百万円単位のお金に関わるだけに責任は大きい。
 「私が借りた40年前と違い、いまは利子がつく場合もあるし、回収は厳しい。借りるデメリットも知らせないと、子どもたちを窮地に追いやりかねない」。生徒や保護者には、「奨学金といってもローンです」と伝えている。
 0.37%――。
 機構が2016年度、回収が難しいと見込んだ奨学金約1690億円のうち、実際に債権回収をあきらめた割合だ。同じように税金をもとに貸し付け事業をする機関のなかでは極めて低く、機構の深追いぶりがうかがえる。
 機構は、債権放棄の基準をこう定めている。
 〈返還未済額が1万円未満でかつ2年以上無応答〉
 つまり、1万円でも残額があるか、2年前まで連絡がついていれば請求を続ける。例外は自己破産、行方不明など。本人が死亡しても、債権を放棄するとは限らない。
 2012年秋、北海道の港町に暮らす夫婦のもとに、265万円の一括返還を求める督促状が届いた。39歳の息子を膵臓(すいぞう)がんで亡くし、8年がたっていた。「なんで、いまごろ」。連帯保証人である夫宛ての書類を見ると、息子は借りた185万円のうち80万円ほど返していた。残金と利息の合計123万円に加えて、延滞金が142万円。延滞金は死後の分も含まれていた。
 妻(77)が機構に電話をすると、担当者は言った。「払えなければ裁判になります」。脅されているようだ、と感じた。
 本人が亡くなった場合、日本学生支援機構法では、借りた額の全部か一部の返還を免除できる、とされている。ただ、施行細則には「返還を延滞した額は、これを免除しない」とあり、延滞していると機構は免除を認めない。
 夫婦は法廷で争うことを選んだ。裁判記録によると、機構は息子の死後8年間、連帯保証人に請求してこなかったことを認め、延滞金を半分にした分割払いを提案した。総額で199万円。依頼した弁護士は「すべて免除させるのは難しい」という。「これ以上延ばすと延滞金がかかります。裁判を続けますか」。唇をかんで和解案をのんだ。
 年金暮らしで貯金はない。2014年になんとか50万円を返し、その後も毎月2万円を振り込んでいる。借りるときは担保も審査もなく貸してくれたが、返すときは事情をくんでもらえない。妻は振込日が迫ると、近くの郵便局まで軽自動車を走らせる。夫が89歳になる春まで、あと4年続く。
 機構によると、回収を強めた2009年以降、長く手をつけていなかった未回収分についても一斉に支払いを促すようになったという。
 ■「家族主義」見直し求める声
 じつは、保証人制度は機構にとっても負担になっている、と幹部は打ち明ける。「制度がある以上、回収できる可能性が低くても、連帯保証人と保証人を追いかけざるをえない。その分、手間とコストがかさむ」
 昨年5月の民法改正では、中小企業の経営者が融資を受ける際、公証人が連帯保証人に会って意思を確かめることが原則になった。マンション契約でも、保証人ではなく保証会社との契約を求める例が増えている。保証人制度をめぐるトラブルを防ごうとする流れがある。
 奨学金問題に取り組む岩重佳治(よしはる)弁護士(東京弁護士会)はいう。「家族の形が多様化し、経済環境も変わっているのに、教育を受けさせるのは親の責任という考えが根強い。親子の共倒れすら招く家族主義を見直すべきだろう」(諸永裕司、阿部峻介)

77歳の妻の手元に残る、月2万円の振込票

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 (以上、朝日新聞より引用)

      ■         ■
 今朝の朝日新聞を読んで、
 埼玉県立蕨(わらび)高校の仲野研(けん)教諭(59)のお言葉、
 奨学金といってもローンです
 0.37%
が印象に残りました。
 高い金利とは思いませんが、
 延滞には利息
 …それも息子さんが亡くなった後もです。
 8年前に膵臓がんで39歳の息子を亡くしたご両親は、
 今でも忘れられないと思います。
      ■         ■
 そんな高齢のご両親に、
 督促を忘れていたかどうか知りませんが、
 今頃になってから、
 督促状なんて、
 あまりにもひどすぎます。
 延滞金が142万円
 延滞金は死後の分も含まれていた

 何とかこのような制度は改革してください。
 息子さんを癌で亡くしたご両親が、
 あまりにもお気の毒です。

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